幽霊

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幽霊

駅近で家賃が安い物件がすぐに見つかったのは不動産屋の手際がいいのか、それとも私が我儘を言わない客だったのか。 母子家庭で大学へ行くお金もない貧乏な家に生まれた宿命として、高卒で働くことになった私はすぐにでも実家を出たかった。 母親は昔から妙なこだわりがある口うるさい人で、私は一人っ子だったから母親からの口うるさい小言の集中砲火の的になった。 よく上か下に兄か姉、弟や妹がいる家庭が羨ましいと思ったものだ。 部屋はすぐに決まった。 特にこれといってこだわりはない。 ただ隣人住民がどんな人か気になったが、これといって変わってそうな人は引っ越しの挨拶をする時にいない様子だ。 ここまでは順調に念願の一人暮らしが実現できると胸を躍らせていたが、異変が起こったのは引っ越しの荷物の整理を一人でこなし、軽い夕食をすましてからうとうとしていた時。 時間は11時を過ぎてしまった。 シャワーぐらい浴びないと、と思いだるい体を起こした時。 ガサガサっと床を這うような音が聞こえた。 まさか...ゴキブリ?! まだ片付けていない段ボールの中から殺虫剤を取り出そうと、段ボールの中を漁っていた時。 足にフワリと何か毛のようなものが当たってような感覚があった。 ゴキブリの触覚にでも当たったかとパニックになったが、次の瞬間。 クゥン。と何かの鳴き声が聞こえた。 可愛らしい、犬の鳴き声だ。 あれ?犬? 足元を見たが犬なんて紛れ込んでいない。 それに玄関の扉は閉まっている。 その日は引っ越しの疲れのせいかと思い早々にシャワーを浴びて寝ることにした。 次の日。 慣れないアルバイトの仕事から帰ってきて疲れ果て、そのまま布団に横になってしまい睡魔に負けて、眠りに落ちてしまった。 そのままどのくらい経ったのだろうか。 うっすら目が覚め始め、うつらうつらになっている時。 ガサガサと音がした。 また?と思った瞬間、今後は部屋中をガサガサ走り回っている。かとおもいきや、私の耳元でハッハッと息づかいが聞こてくる。 私は思わず飛び起き辺りを見回したが、そこには何もいなかった だが不思議と怖い感じはしなかったが、得体の知れない物が家にいるのは気になるから、私は次の日の夜、その正体を掴もうとその日は寝ずに待機していた。 ガサガサ。 部屋の隅で音がする。 音の正体に目をやると、そこには小さな影があった。 近づいて見てみると、それは小さな半透明の犬だった。 もふもふのポメラニアンだ。 音の正体は犬の幽霊だった。 幽霊は決まった時間に現れるようで、私は犬のために水とペットフードを用意するようになった。 幽霊のくせに食欲があるようで毎日ムシャムシャ食べている。 犬の名前はチビと名付けた。 夜仕事から帰ってきてチビが現れるようになると、ボール遊びをしたりして遊んであげている。 私が落ち込んでいる時や、熱が出て寝込んでいる時は心配するように寄り添ってくれる。 やっぱり一人暮らししてよかった。 私に相棒というものが出来た。
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