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ザギルは休むことなくキャリーナが見つけた悩める人々へ必要なものを届ける役目を続けていたが、ヘンリーの父親の一件があった次の日は気分が乗らずに休んだ。 ザギルは森の奥深くに住むひいおばあちゃんに会いに来た。 『ザギルや、久しぶりに遊びに来たと思ったら元気が無いじゃないかね?』 普段はみんなにあまのじゃくなザギルだが、小さな頃から庇ってくれたひいおばあちゃんにだけは自分の気持ちを素直に話せた。 『なあ、ひいばあちゃん。最近キャリーナと一緒に困っている人を手助けしてるんだけど、だんだんそれがいいことなのかわからなくなってきてさ。』 『ほほう。どういうことだい?』 『キャリーナが助けようとする人は状況が偏ってるんだ。いつも友達と恋人に裏切られた女性。もっと色んなことで困ってる人を助けてもいいのにと思うんだ。それに…』 ザギルはため息をついた。 『昨日はあたしがじいさんを届けたせいで3人も命を落としたんだ。なのにキャリーナはそれも仕方なしって感じで。』 ひいおばあちゃんはうんうんと頷き『なるほどね』と言った。 『ザギルや、キャリーナは昔、自分の友達と恋人に裏切れたんじゃ。その時の無念をはらしたいんじゃろう。』 『え?どういうこと?キャリーナは何も言ってなかったよ!』とザギルは驚きに飛び上がった。 ひいおばあちゃんはキャリーナの昔話を話してくれた。 『私が若い頃、キャリーナとは散歩中の公園で仲良くなって、今のあんたみたいに彼女の部屋のバルコニーに飛んで行っては色んな話をしたもんさ。 キャリーナは王室に仕えている時に家臣のひとりと恋に落ちたんだ。結婚の約束までしていてそれは幸せそうだった。 ところがある日遊びに行くと、部屋の中で泣きじゃくっていた。聞けば自分の友達と恋人が浮気していたという。 キャリーナが友達に恋人を紹介した時に彼に一目惚れした友達が“魔女のキャリーナは実は恐ろしい生き物”と嘘のエピソードばかり吹き込んだらしい。嘘を信じた恋人は友達の肩を抱いてキャリーナの前にあらわれ“やはり結婚するなら人間がいい”と言い放ったそうじゃ。』 『ひどい…。』ザギルはさすがに絶句した。そして『それからどうしたの?』と先を急がせた。 『キャリーナを気に入っていた王様がそれを知って激怒して浮気した2人をすぐに国外に追放した。キャリーナは後になって、王様の気持ちは嬉しかったが自分でも決着をつけたかったと言っていた。』 ああ、それでか…。ザギルはキャリーナの気持ちを納得した。 『あの子は優秀な魔女だったから、王室の仕事を引退したら次は神様に仕える魔女に昇格できるはずだったんだ。しかし人間の男性との結婚を決めていたから断っていた。王様はこれを機会に神様に仕えたらどうかとすすめたが…キャリーナは建ててもらった石像に自ら魂を閉じ込めてしまった。』 ひいおばあちゃんは話しているうちに当時の気持ちを思い出したようで、涙声になっていた。 『今からでもキャリーナが望めば神様の元へ行けると思うんじゃけどねぇ。』 『そうなの?』 『そうさ、あの子は本当に優秀だったから、今からでも神様は喜ばれるだろうさ。 当時は私が石像の肩に止まって説得しても返事さえしてくれなかったけどな…。』 ザギルはそこまで聞くと『ひいばあちゃん、よくわかった!行ってくる!』と飛び出して行った。 ひいおばあちゃんはその後ろ姿に『キャリーナによろしくなー!』と叫んだ。
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