10、真摯に向き合う

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10、真摯に向き合う

◇◆◇ 翌朝、日が昇ると同時に辰巳は目覚め、有無を言わさず盛ってきた。 俺は半分眠った状態で寝バックでヤラれた。 朝っぱらから疲れたが、結局、早起きする羽目になった。 先に家事やら朝飯を済ませ、頃合を見て俺のバイト先と辰巳の職場に休むと連絡を入れた。 約束した10時になるまで、珈琲を飲んだりしてまったり過ごしたかったが……、また辰巳が盛ってきた。 元からそっちが強いのはわかっているが、犬になったことで本能が剥き出しになってしまったらしい。 俺は床に押し倒され、自然と四つん這いの体勢になってしまった。 「はっ、はっ、はっ」 辰巳は息を荒らげ、犬みたいに背中にのしかかって腰を振る。 「ちょっと~、また用意してやるのは面倒だろ」 これから出かけなきゃならないのに、シャワ浣とかやりたくない。 「クーン、はあ、はあ」 しかし、辰巳の興奮はおさまりそうにないし、俺は少し考えていいことを思いついた。 「じゃあさ、フェラしたげる、それならいいだろ」 犬にフェラが理解できるのか? という疑問はあったが、とりあえず言ってみた。 「ワン!」 理解できたらしい。 まだ着替えてないから、二人ともパジャマのままだ。 お座りする辰巳を足を伸ばして座らせて、パジャマのズボンをパンツごとズラした。 プルンと飛び出す起立したナニ。 ゆうべも朝もやったのに、もうこんなに元気になってる。 これも犬化効果か? とか思いながら屈み込み、はあはあ息を荒らげる辰巳の竿を咥えた。 「はっ、はっ」 辰巳はハアハア言いながら俺の背中を撫でてきた。 犬に取り憑かれていても、多少は人間の心があるのか? よくわかんねーが、ナニは洗ってないから淫臭が鼻についた。 けど、俺はあんまそんなのは気にしないたちだし、構わずに竿を頬張って頭を揺らしていった。 辰巳はさっきよりもっとはあはあ言って興奮している。 裏側を刺激してやったら、呆気なくピュッと射精した。 人間の辰巳ならこんなにすぐにはイカないのだが、犬だからか? アホみたいに昂って早漏になっている。 だけど……本番の時はやたら長くもつ。 って事は、交尾とフェラは別物だということ? 犬化した辰巳は謎だらけだ。 「はい、済んだよ、満足した?」 俺はエロい気分にはなれず、ご褒美でも与えたかのように辰巳に言った。 「ワン!」 辰巳は嬉しそうに吠える。 どうやら満足したようなので、俺は後始末をしてぼちぼち着替えさせる事にした。 辰巳に言い聞かせたら、素直に従ったので着替えは問題なく終わり、その後で俺も着替えた。 一応お祓いだし、ジャージを着ていくのはさすがに気が引ける。 カジュアルなパンツにシャツ、ジャケットを羽織った。 辰巳も似たような格好にさせている。 それはいいのだが、出発までの間、やたらとじゃれついてきて、相手をするのが大変だった。 リアルな犬でも大型犬だと相手をするのは大変だと思うが、体は人間なのでプチ取っ組み合いになる。 そんなこんなでいざ出発となり、運転は昨日と同じように辰巳に任せた。 途中でペットショップに寄っておもちゃを買ってやったら、すげー気に入って咥えて離さない。 人に見られたら恥ずかしいが、車の中だし、好きにさせる事にした。 近場だから10分位走って目的の神社にやって来た。 小さな神社だが、ちゃんと神主さんがいて拝殿や本殿もある。 神社の建物の横はありがちな普通の住宅になっているが、ここに神主さん一家が住んでいるんだろう。 駐車場に車を止め、辰巳を連れて住宅の方へ行った。 お参りに来たわけじゃないので、その方がいいと思ったのだ。 辰巳はまだおもちゃを咥えているが、事情は話してあるので構わないだろう。 ピンポンを鳴らしたらインターホンごしに応答があったので、昨日予約した牧原ですと言ったら、すぐに足音がしてドアが開き、初老の男性が顔を出した。 「ああ、お祓いの牧原さんですね、えっと……憑かれたのは、あ……、そちらの方ですね」 「あ、はい、そうです」 多分この人が神主だろう。 神社の名前は八幡神社だが、表札には宮道という名前が書かれていた。 神主さんは辰巳を見てすぐにわかったらしい。 そりゃ犬のおもちゃを咥えてるんだから、どっちが取り憑かれてるか一目瞭然だ。 「それじゃあ、本殿の方がいいかな、その感じだと、かなり強い霊のようなので、まず拝殿でお参りした後、手水舎、えっと手洗い場ね、そこで手を洗って口をゆすいでください、それが済んだら神社の賽銭箱がある建物じゃなく、その後ろ側の建物、そこに来てください、そこで儀式を行います」 「わかりました」 俺は説明を受けた後でのし袋に入れた初穂料を渡した。 それから玄関に入って住所や氏名、祈祷を受ける人物の名前などを書き、その後で言われた通りに辰巳を連れて手水舎へ行った。 俺から先にお清めを済ませ、辰巳にやらせていったが、おもちゃを咥えて離そうとしないので、地味に揉み合いになって苦戦した。 それが済んだら本殿に歩いて行き、辰巳を促して靴を脱いで中に入った。 中は板敷きだが、低めな木製の椅子が置いてある。 俺と辰巳は並んで椅子に座り、神主の装束に着替えた神主さんに祓詞を受けた。 なにがなんだかさっぱりだが、その次は巫女さんが出てきて舞を舞い、鈴を鳴らした。 こんな事した事がないので、俺達は神主さんの指示に従うのみだ。 神主さんは、よくわからない呪文のような言葉を口にしていた。 恐らく、仏教でいう成仏させる為の言葉なんだろう。 俺は厳粛な気持ちでいたが、辰巳はずっとおもちゃを咥えたままだった。 本当に霊が祓えるのか不安になったが、玉串拝礼をして神主さんから御札を貰った瞬間、辰巳はハッとしたような顔をして、口に咥えたおもちゃを床にポトリと落とした。 「辰巳……」 俺は小声で声をかけてみた。 「シン……俺……」 どうやら上手くいったらしく、辰巳が戻ってきたようだ。 神主さんは「これでお祓いは終了です」と言った。 俺はこんな簡単に祓えるとは思ってなかったので、唖然とするばかりだったが、神主さんは俺達の前に立つと、辰巳に向かって話しかけてきた。 「井筒さん、遊び半分で心霊スポットに行っては駄目ですよ、あなたは犬の霊に取り憑かれていた、あの犬は悪さをする為ではなく、ただ遊びたかったようだ、これで一応あなたから離れたが、動物霊は疲れたりストレスが溜まるとつきやすい、ゆっくりとお風呂にでも浸かってリラックスしなさい」 辰巳は仕事柄ストレスを溜めやすいから、それも原因だったのかもしれない。 俺は離れた犬の霊が気になって神主さんに聞いた。 すると、動物霊は人と同等に祀る事はできないが、祝詞奏上をしたので平安に暮らせる場所にいるとの事だ。 あのよくわからない言葉にはそんな大事な意味があったらしい。 「ああ、それから……くれぐれも心霊スポットには行かないように、今回は良い霊で良かったが、もし悪い霊だと私ひとりじゃ手におえなくなるからね」 神主さんは俺達2人に向かって厳重に注意を促し、俺達は神主さんに深々と頭を下げてお礼を言った後、おごそかな気持ちで本殿を後にした。
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