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12、またトラブル?その2
◇◆◇
それから俺は落ち着かない気持ちで辰巳からの連絡をひたすら待った。
零時近くになった時、玄関のドアが開いて辰巳が帰ってきた。
俺はすっ飛んで玄関に行った。
「辰巳、どうした? 何があったんだ?」
「ああ、遅くなって悪い、とにかくあがるわ」
辰巳は疲れた表情で言うと、部屋に上がってきた。
俺は料理を作るのは無理だから、晩飯どうする? って聞いた。
「ああ、ラーメン食ってきたから大丈夫だ、先に風呂入ってくるわ」
辰巳はカバンを床に投げ出して言うと、さっさと風呂場へ向かった。
普段はそういったガサツな態度は取らないのに、よっぽど疲れているのか、それとも何か嫌な事でもあったのか?
なんだか分からないが、俺は辰巳が風呂から出るのを待つ事にした。
やがて、辰巳が風呂から出てきた。
部屋にはローテーブルがあり、デカいビーズクッションを座椅子代わりにしてる。
辰巳はビーズクッションを引っ張って引き寄せると、パジャマ姿でクッションに思いっきり背中を預けた。
よし、もう聞いてもいいだろう。
「辰巳、何があったんだ? 不正受給の事?」
俺は辰巳の不機嫌そうな顔を見て、やっぱ仕事絡みだと思った。
「ああ、そうだ、実はな……」
辰巳は事情を話していった。
不正受給者が住むアパートに行ったら、築50年は経ってるような古いアパートだったらしい。
で、不正受給者本人は50代、持病持ちで働けなくなり生活保護を受けてるとか。
それなのに、昨年内緒で仕事をして収入を得ていたという。
「訪問ってさ、わざわざ行かなきゃならないわけ?」
そんな収入を誤魔化すような人間に会うのはヤバくねぇか?
「ああ、それも俺らの仕事だからな、じかに受給者に会って事情を聞くんだ、それがな、いざ話を切り出したら……その受給者、働いてないと言って嘘をつく、だから税務調査でバレるんだと言ったら……そこからは延々と個人的な事情を語り始めた、俺は段々うんざりしてきたが、病気の娘がいてそれで働いたんだって言う、けどな、そういう事を言う奴に限って大体全部嘘なんだ、俺は事前調査でアパート周辺で近所の人間から聞き取りをやってた、そしたらそいつ、毎日パチンコに通ってるらしい、内緒で稼いだ金もギャンブルに使ったに違いないんだ」
「ふーん……、そんな嘘つきにグダグダ話を聞かされて遅くなったわけ?」
「そうだ、だから不正受給した分はきっちり返して貰う」
「金、ないんじゃね?」
「なくてもなんとかして貰う、刑事告訴になると言って脅したら、そいつは急にあわてだして、なんとかすると言い出した」
ひと通り話を聞いて、帰宅が遅くなった理由はわかった。
……にしても、今回ばかりは相手が悪質過ぎて、仏の辰巳も鬼になったようだ。
俺は辰巳が下手な同情をしなかった事にホッとしたが……。
どのみち、こんな事がずっと続くのかと思ったら、聞いてる俺でさえ嫌になる。
「なあ辰巳、もう公務員やめたら? それか課を変えて貰うとか」
生活保護を受ける人達って、まともな人もいるとは思うけど、なんか変な人が多くて精神的に壊れそうな気がしてくる。
「いや、大変だがやり甲斐はある、辞めるつもりはない」
だが、辰巳はキッパリと辞めるつもりはないと言った。
そこまでやる気に満ちてちゃ、俺が何を言っても無駄だろう。
ただ、俺はまたまたいやーな予感がしてきた。
その夜……。
俺はまた辰巳に抱かれたが、案の定、辰巳は必要以上に噛み付いてきた。
「ひいっ……、ああっ!」
辰巳にとっては、無意識にストレスを発散してるんだろうが、今夜はめちゃくちゃ痛い……。
痛いのに、正常位で繋がって、俺はトコロテンをしている。
「シン、好きだ……、いくよ、いっていい?」
「ハァ、あ、うん……」
辰巳は焦るように俺に聞くと、俺の上で激しく揺れ動きだした。
俺は霞む天井を見ながら、これも少しは辰巳の為になっているんだろうか? って思った。
だとしたら……俺はこれからも痛いのを我慢して、ドMになってイキ果てるしかない。
俺と辰巳は友情から始まった恋ではあるが、俺達の愛は永遠に変わらないって、俺はそう信じている。
そう信じて、これからも辰巳をサポートしつつ、2人で一緒に歩んで行きたい。
いつか老いて爺さんになっても、もしその時まで一緒にいられたとしたら……きっとすげー幸せなんじゃないかと思った。
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