9、辰巳なのか犬なのか

1/1
前へ
/12ページ
次へ

9、辰巳なのか犬なのか

◇◆◇ 犬の霊に憑依された辰巳だが、運転は普通に出来た。 冷静に考えたら……運転出来る犬って、すげー犬だ。 俺はホッとしたが……ホッとしてる場合じゃなかった。 これは早くお祓いして貰わなきゃ、仕事どうすんだ? ワンとしか言えねーとか、ネタとしては笑えるが、現実はそうもいかない。 アパートに戻ってきたら、犬化してまとわりつく辰巳を適当にあしらいながら、自宅周辺の神社をググッて探した。 ……と一軒、比較的近い場所に神社があった。 ソッコーで電話して事情を話したら、今日は無理だから明日来てくれと言う。 本当は今すぐお願いしたかったが、神社さんにも都合がある。 辰巳を休ませて連れて行くことにして、明日の10時に神社へ行く事になった。 職場には明日の朝身内のふりをして電話し、急病を理由で休みたいと、そう言う事にした。 「はっ、はっ、ワン!」 辰巳はベッドに座る俺にくっついて離れない。 あの廃墟化した神社……。 どういった理由で神主がいなくなったのか、そんなのわかるわけがないが、この犬は飼い主がいなくなって寂しかったんだろう。 ひょっとして置き去りにされたとか? だとしたら可哀想過ぎる。 だが、犬に取り憑かれたのは辰巳にも責任がある。 「あのな~、お参りもせずにひとんちに入るからこうなるんだぞ」 あの横にあった家の方は、おそらく神主さん一家の住居だったに違いない。 ついでに犬も……。 辰巳がズカズカと敷地に立ち入ったので、成仏できずにさまよってた犬の霊が取り憑いたんだ。 「クーン」 ひとりで色々考えていたら、辰巳が突然ガバッとのしかかり、俺はベッドに押し倒されてしまった。 「うわっ!」 不意にくるからびっくりした。 「はあ、はあ……、はっ、はっ」 辰巳は俺にかぶさって真上から俺の顔を凝視する。 その顔は赤らんでいてハアハアいってるし、興奮してるのが丸わかりだ。 「……まさか、ヤリたいとか?」 もしかして? と思って聞いてみた。 「ワン!」 辰巳はやる気満々で答える。 「あ、わ、わ、わかった、わかったからやめろ」 しかも、べろべろ攻撃が始まった。 やめてくれぇー! 顔が唾でベトベトになる。 「クーン」 承諾したら辰巳はやめてくれたが、甘えたように鼻を鳴らす。 「じゃ、ちょい待て、準備してくっから……」 俺は下準備をする事にした。 「ワン、ワン!」 辰巳はめちゃくちゃ喜んで吠える。 「はあ~、辰巳とやることには違いないんだが……今は辰巳じゃなくて犬だ、犬とヤル羽目になるとは思わなかった」 すげー微妙な気持ちだったが、ちょっとだけ……面白そうだと思ったのは内緒だ。 体を綺麗にしてシャワーを浴び、ベッドに戻ったら、辰巳は全裸で待機していた。 ベッドの上に犬みたいな格好でお座りしている。 けど、悪いが……犬っていうよりチンパンジーに見える。 「ぷはっ! あははっ!」 そりゃ姿は人間なんだから、チンパンになるわな。 「はっ、はっ」 笑いながら腰タオルを取って真っ裸でベッドにあがったら、辰巳は犬みたいに息を荒らげ、俺の背後に回り込んで抱きついてくる。 「えっ?……、わっ、ちょっと待って、いきなり? つーか犬だからいきなりなのか?」 腰を振って俺の肌にナニを擦り付けてくるが、これはオス犬が盛ってる時にやる行動だ。 犬に前戯なんかあるわけがないし、早く挿入したいんだろう。 「しょうがないな~」 ムードもへったくれもないが、犬だから仕方がない。 俺はローションを塗って四つん這いになった。 すると、辰巳はソッコーでガバッと背中にのしかかり、手を使わずにナニを入れようとする。 もうわかっちゃいるが、マジで犬だ。 これはセックスというより交尾じゃないのか? ふとそう思ったが、思った拍子にズブッと肉槍が突き刺さってきた。 「あぁっ!」 いきなり挿入され、俺は感じてしまった。 「はっ、はっ、はっ」 辰巳の荒い息遣いはまさに犬そのものだが、体は人間だから俺の腰を掴んで激しく突き入れる。 ただ動きは至って単純で、ただ出し入れを繰り返すだけだ。 やっぱ犬だな~と思ったら奇妙な気持ちになるが、これはこれで、いつもと違うやり方が逆に興奮を煽った。 「た、辰巳ぃ~」 俺は激しい突き上げに堪らなくなり、片手を後ろに伸ばした。 「はあ、はあ」 辰巳は俺の背中にかぶさって耳をぺろぺろ舐めてきた。 とにかくやたら息遣いが荒い。 やっぱり早くお祓いをして貰わなきゃ。 神社ではおとなしくして貰わなきゃならないし、約束したので、行く途中でペットショップに寄って犬の玩具を買おう。 にしても……なかなかイク気配がない。 辰巳は動くのをやめてしまい、ナニを突っ込んだままでいる。 射精しているわけではないが、なんだこれは? 犬だから犬みたいに繋がったままになってるのか? だけど、その状態でひたすら耳や項を舐め回してくるから、俺の方がイきそうになってきた。 「うああ……駄目だ、イク」 我慢できなくなっていってしまった。 股間に集まった熱が弾け出し、白濁液がダラダラと垂れて快感で体中がぞくぞくする。 「ワン……!」 すると、辰巳はひと声鳴いて奥をズンと突いてきた。 「んうっ!」 思わず体が強ばったが、俺がいった事であそこが締まり、それで辰巳もいったらしく、体内で脈動を感じる。 あったかいのが広がってきて、俺は慣れ親しんだその感覚に酔いしれた。 「あぁ……」 辰巳は背中にへばりついて離れない。 相変わらず息を荒らげ、快楽に浸っているようだ。 それからしばらくの間、俺達は繋がったままでいた。 やがて辰巳が満足して離れ、俺はそろそろ寝ようと思って後始末を済ませ、パジャマを着直した。 ついでに辰巳にもパンツとパジャマを着せてやった。 布団に潜り込むと、辰巳は布団に潜り込んで俺にぴったりとくっついてきた。 「クーン……」 犬みたいに甘えて擦り寄ってくる。 この犬……元飼い主に相当可愛がられていたんだろう。 それなのに、何故成仏できずにあの場所にいたんだろうか。 「よしよし、ほら」 普段は俺が腕枕をして貰うことが多いが、今は俺が辰巳に腕枕をしてぎゅっと抱き寄せた。 辰巳は満足そうに目を閉じる。 素で可愛いと、そう思った。 犬だから甘えてるんだ……とわかってはいるが、たまにはこういうのもいいなって思い、俺も辰巳の温もりを感じながら目を閉じた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加