11.魔銃士、いきなり不審者扱いされる

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11.魔銃士、いきなり不審者扱いされる

 雑談をしながら歩く。四人はつい二ヶ月前に冒険者ギルドに登録した幼馴染み同士で、彼らの親たちも冒険者ギルドに所属しているそうだ。十五歳で成人と見なされるこの世界。四人は成人したら冒険者になり、ランクを上げて引退したら村を守る自警団の一員になると決めているそうだ。彼らの親は五年前に再び村を出て、どこかのダンジョンに潜っているらしい。  たまに無事であるとの連絡が村のギルドに届くので、リリィたちもいつか一人前の冒険者と認められるDランクになったら、村を出てレベルの低いダンジョン攻略に出る予定なのだという。それまでは地道に採集クエストや害虫駆除クエストに励み、ランクを上げるポイントを溜めているそうだ。  二時間かけて森を出ると、割と近距離に高い柵が見えた。あの向こうがテリベの村か。頑丈な木の大門前にひとりの武装した男が立っている。物見(やぐら)も建っており、気配を探れば櫓にも人の気配がする。 「ダンカンさん、お疲れさまです」 「お前たちか。採取クエストは完了したか? ――ん? その人は誰だ」  瞬時に殺気を放ち腰の剣を抜いた。へぇ、スピードはなかなかだな。だがその程度の殺気なんざ俺には通用しない。チンピラがイキっているだけにしか感じられない。 「この人は森の中で出会った。東方の国から来た冒険者らしい」  赤毛の少年が、俺のことを説明してくれる。結界で姿を消しているルチアは、森の中からずっと無言を貫き通していて、この場でもスルーされた。姿を現さない理由を念話で聞いたら 『森の守護者であるフェンリルがいなくなったことを、村長たちに(じか)に説明したいんだ』  とのこと。  ダンカンと呼ばれた門番も櫓の見張り番もルチアの気配が感じられないらしく、視線は主に俺に注がれている。 「東方からの冒険者? どおりで随分と珍妙な格好をしているはずだ。だが、掟に従いこの村に入るには身分証が必要だ。みせてもらおうか」  え、身分証? そんなもの持ってないんだが。てか前の世界での身分証も偽造だからな、ここで通用するはずがない。どうしよう。 「どうした? 東方諸国とはいえ、冒険者ならちゃんと冒険者カードを発行されているはずだ。未所持で国境を越えているならば、密入国者として捕らえるぞ!」  へえ、殺気が一段と脹れあがった。それでも仔猫が精一杯威嚇している程度でしかないけど。俺の懐には投擲ナイフが数本あるし、魔銃もある。無手でいけるけどな、この程度の殺気しか放てないなら。新米たちもただならぬ空気に俺から離れ、足下の石を拾ってダンカンの味方という意思表示をする。うーん、どうしようか。でもない袖は振れないしな。 『その者の素性は(われ)が保障しよう』  今まで空気と化していたルチアが結界を解き、その神々しい姿を現した。
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