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男は扉を開けずに耳をそばだてて、そのまま外の様子を窺った。
あの女性が誰かと話をしているようだった。
「ト・・ト・・トイレ」
扉の向こうからしゃがれた声が聞こえた。
おそらく年配の男性の声だった。
会話の内容から察するに、この声の主は茂木平さんという名前なのだろう。
その茂木平さんという人物はどうやらトイレに行こうとしているようだった。
男は意を決しておもむろに扉を開いた。
ガラガラッ。
扉は横にスライドした。
扉の向こうでは中腰で椅子から立とうとしている男性がいて男と目が合った。
この人が茂木平さんなのか。
その横を見ると、あの女性が男性と斜向かいの位置に立っていた。
「あ、ソクラさんお早うー」
あの女性がこちらを向いて手を振った。
「お、おはよう」
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