3.食事

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男は少し気まずさを感じながら返事をした。 昨日は気が付かなかったが、病室の外は広いスペースになっていて、テーブルや椅子が並んでいる。 辺りにはごそごそと体を動かす人や、テレビの前に釘付けになっている人がいた。 おそらく茂木平さんと思われる年配の男性は、看護師に体を支えられながら腰を曲げてゆっくりと歩いていた。 男は二人を遠巻きに見ながら椅子の一つに腰掛けた。 テレビを見ていた中年男性がちらっとこちらを見たようだが、男と目が合うとすぐに視線を戻した。 男は自分の中に一つの疑問が浮かぶのを感じた。 ここは一体何の病院なんだ? 男は再び辺りを見回したが、その答えとなるものは見つからなかった。 代わりに一人の看護師がワゴンを運んでくるのが見えた。 ・・・食べ物の匂いがする。 あの女性がワゴンに近づいて看護師に声をかけた。 「わー、焼き魚!私、焼き魚大好きなんです」 女性は手を叩いて飛び上がった。 男は自分の腹が鳴るのを感じた。
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