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ワゴンがキュっという音を鳴らしてテーブルの横に止められた。
ワゴンから手を離した看護師が順番に患者の名前を呼び始めた。
どうやら今から食事が始まるらしい。
名前を呼ばれたら食事が盛られたトレーを受け取るシステムのようだった。
男は、患者が次から次へと食事の乗ったトレーを受け取る様子をぼーっと眺めていた。
しばらくそうしていると、男の名前が呼ばれた。
男は椅子から立ち上がり、ワゴンの前まで歩いていった。
「ソクラさん、少し元気になったみたいですね」
年配の看護師がそう言いながら一つのトレーを差し出した。
男は看護師からトレーを受け取って、上に乗っているものを眺めた。
和食を中心とした料理で、いい匂いが漂う。
「いやいやいや・・・」
不意に奥の部屋の扉が開いて声がした。
男はトレーを持ったまま、奥の部屋に目をやった。
茂木平さんと思われる男性が看護師に脇を抱えられながら中腰で立っていた。
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