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「おう、朝飯かい」
茂木平さんは看護師に誘導されながら、看護師の後をしずしずと椅子の方へと歩いていった。
一見なんてことのない場面のようだった。
しかし、男には気になることがあった。
それは、一連の様子がまるで何かのシナリオに沿って動いているかのように思えるということだった。
シナリオ通りにワゴンが到着し、シナリオ通りに患者の名前が呼ばれ、シナリオ通りに皆がトレーを受け取る。
皆、決まりきった動きをしているだけ。
男は自分がただその決まりきった動きを眺めるだけの存在なのだろうかと思った。
それとも・・・。
男は脳裏に浮かんだ疑問を払いながら、元いた席へと戻った。
シナリオ・・・。
男はテーブルにトレーを置きながらその言葉を反芻した。
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