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皆、食べ終えたトレーをワゴンに返している。
男は残りの食事を急いで食べた。
「そんなに、慌てなくても大丈夫ですよ」
年配の看護師が男に気づいて言った。
男は茶碗をトレーに乗せると、トレーごと持ち上げて席を立った。
茂木平さんが横目でこちらを見たようだが、男は気にせずトレーを看護師に返した。
ある種の穏やかささえ感じる光景だった。
男は気分を良くし何気なく廊下の奥を見ると、不意に物々しいものが目に入った。
出入り口の脇に鉄格子が嵌っていた。
見れば、食事をしたスペースの窓にも鉄格子が嵌っている。
風景に溶け込んでいるので男はずっと気付かなかった。
男は急いで自分の病室の扉を開けた。
病室の窓にも鉄格子が嵌っていた。
どこもかしこも鉄格子が嵌っている。
このフロアに唯一の扉はカードキーが無いと出入りすることはできない。
そこには、ここにいる者たちを一歩も外に出さないという強い意思のようなものが感じられた。
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