4.違和感

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あの女性の言葉が不意に脳裏をよぎった。 『どうせあなたも私もこの病院から出られないんだから・・・』 今になってやっとあの言葉の意味が分かった。 あれは言葉通りの意味だった。 自分もあの女性も物理的にこの病院から出ることはできない。 鉄格子とカードキーによって外への行き来は完全に遮られている。 ということは、ここは・・・。 男は続きの言葉を飲み込んだ。 「精神科病院」 「気づいたようね」 背後から声がした。 振り向くとあの女性が腕を組んで立っていた。 「そう、ここは精神科病院。あなたも私もここから出ることはできない。病気が良くないうちはね」 「病気が良くないうち・・・」 男は彼女の意味深な言葉を繰り返した。 「じゃぁ君も俺も・・・?」 男は女性に言った。
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