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2.名前
病室の中の様子は男の居る場所からは分からなかった。
ただ、椅子の位置から言っておそらくその病室からこの場所へ移動してきたのだろうということは分かった。
きっと意識を失っていたのだと思った。
なぜなら、この場所まで移動した記憶がなかったからだ。
もっと言うなら、男はかなりの部分の記憶がなかった。
この病院に来た記憶も、それより前の記憶も・・・。
男は自分がきっと意識が戻るか戻らないかの瀬戸際にいたのだと思った。
おぼろげながら、強烈な光が男自身を包んだという記憶だけはあった。
姿勢を戻すと、女性は青いユニフォームを着た看護師と話をしていた。
ここからは会話の内容までは分からなかった。
看護師はうなずきながら男を見た。
看護師は男の側まで近寄ると「点滴を外しますね」と言って、男の右腕から銀色に光る針を素早い動きで抜いた。
代わりに白い綿のようなものを針が刺さっていた場所にあてがった。
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