2.名前

2/5
前へ
/56ページ
次へ
「少し気がついたみたいですね」 看護師は言った。 看護師はスラッと細身で、顔はシュッとしていた。 目尻に特徴がある。 男は少しだけ頷いた。 「先生に伝えておきますね。それと・・・」 看護師は男の体を椅子から起こした。 「病室を見たいそうですね」 看護師はにこやかに言った。 そんなことは言ってなかった。 おそらくあの女性が適当に話を作ったのだった。 あの女性・・・。 そういえば、男はあの女性の名前すら知らなかった。 「良かったねー」 男がそう思うなり、あの女性が手を叩きながら男に近寄った。 男は女性に名前を聞こうと思った。 しかし、その瞬間、男にとって重要なものが目に飛び込んできた。 それは病室の入り口にあるネームプレートだった。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加