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冒険の始まり
窓のない部屋で光を感じることもなく、宝石のような瞳を開いたのはフェリーヌだった。
此処は、オブシディアン魔法学校にある自室。
慌てたように自室から出て行くルクスに、一度だけ頭を持ち上げるフェリーヌは後ろ姿をじっと見つめるだけ。
ルクスが使っているベッドの枕横がフェリーヌの定位置だった。
どのくらい時間が経ったか、体を起こすフェリーヌは背中を伸ばす。毎日欠かさず体をほぐす行いだ。
三つのモフモフした尻尾をフリフリと揺らす。
フェリーヌはルクスの使い魔だ。指示のない間は、生徒や教職員に見つからないよう自室にこもっている。
別に使い魔を校内で連れてはいけない規則はない。
ただ、その見た目としては生徒に見つかるわけにはいかなかった。
なぜなら、大きな耳と丸くて青い瞳。モフモフボディは、刺激が強すぎるから……。
"可愛い"存在は、ときに争いの火種にもなる。
そんなフェリーヌは、跳ぶようにベッドから降りるとルクスが去った扉に向かった。
クンクンと、匂いを嗅いだあと、おもむろにカリカリとドアを引っ掻く。
いつもやっている日課だった……のだが――。
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