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「――おいで」
中にいる人物の厳かな低い声が響き、フェリーヌの大きな耳はピクピクと動いた。
だが、フェリーヌは臆することなくタタッと、勢い良く室内に入る。
厳かな椅子に座る中年の男。
栗色に両サイドをこめかみまで刈り上げられたベリーショートに、天然なのか上部は柔らかそうな髪が揺れていた。
中にいたのはオブシディアン魔法学校の校長ウルフラム・アインハイト。
つまり、此処は校長室だった。
「甘いものは食べるか? いや、勝手にお主に食べ物を与えたらルクスに叱られるか……」
校長室の机には、宝箱を模した入れ物がある。
そこには沢山の甘味が入っていて、一つを取り出したウルフラムは再び閉まった。
部屋の中央に立ち止まったまま、ウルフラムの声を聞いてピクピクと耳を動かすフェリーヌは、何かを訴えてみえる。
「ふむ……。もしかしなくても、ルクスを探しているのだろう? 普通じゃない使い魔であるお主が一人でいるのはおかしいからな」
ウルフラムの言葉に反応して三本の尻尾を揺らすフェリーヌはとても分かりやすい。
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