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「確か、授業の前に資料室に行くと言っていた。行ってみるといい」
フェリーヌは立ち上がると開いたままの扉から駆け足で部屋を出る。
後ろ手にパタンと閉まる音がしたが、振り返ることはなく資料室を目指した。
フェリーヌがいた場所は、教員寮と校長室しかなく姿を見せていたが、資料室は一階にある。
教室は一階にあるため多くの生徒に遭遇するのは必然だった。
階段を跳ぶようにして一段ずつ降りていくフェリーヌは、三階まで降りてきたところで姿を消す。
主であるルクスにも言っていないフェリーヌの能力だった。
姿を消す隠密魔法と同じで、フェリーヌも姿を消すことが出来る。
ただ、ルクスに話をしていないのは可愛い理由からだった。
一階まで降りると、遭遇する生徒の間を器用にすり抜けて資料室に飛び込む。
「おや? そこにいるのは、誰かの使い魔かなぁ?」
未だに姿を消していたフェリーヌに気が付いたのは、金の短髪に薄茶色の底が知れない目をした少年だった。
だが、フェリーヌは知っている。その少年は、ルクスの仲間であるフィニス・テネーブルだった。
司書もいるはずの受付は、『外出中』という立て札が置かれている。
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