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笑う太陽
人気お笑い芸人の隼太は悩んでいることがある。それは娘である理奈が笑ってくれないこと。
理奈は母親が病気して以来笑うことをしなくなってしまったのだ。
理奈をどうしても笑わせたくて隼太は必死にネタを考え、理奈を笑わせようとした。
だが世間には受けるネタが理奈には通用しない。
理奈は笑わない。どうしてなのかわからない。
「うーん、どうしたら笑ってくれるか……」
隼太はネタを考える。必死になって考えた。
そしてふと思い出した。
それは妻である理央が好きだった一番くだらない、面白くもないネタ。魔法のネタ。
「理央。ちょ~とお父さん、見てみて?」
隼太は病室の前で眠っている理央と理奈に披露した。披露したくはなかったがどうしても二人を笑わせたかった。
羞恥心に駆られながら芸を終えた途端――理奈が吹き出した。
「ふふっ、面白い! お父さん!」
「そ、そうか? はぁ……良かった。理奈が笑ってくれた」
嬉しさを募らせていると後ろから笑い声がした。
眠っていたはずの理央が目を覚ましたのだ。
「ふふっ、久しぶりにその芸見たら……笑っちゃった!」
二人の可愛らしい声が聞こえる。それだけで隼太は嬉しくて――涙が零れた。
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