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斬首…
俺は愛ちゃんの出来事から自分自身を見直した。
やっぱ愛を告げる時はきちんとしなきゃネ☆
当たり前だ。
おちゃらけて異性の気持ちを我が物にできるほど話術を持ち合わせていないし、素材もよくねぇ。
それなのに基本中の基本を実行しないという愚行に我ながら反吐が出る。
だから俺は機が熟すのを待った。
待ったといえば慎重になったと捉えることができるが実はそうではない。
そう、もうおわかりですね?
チキったんスよ。
ビビり散らかしたわけっスよ。
そりゃお前、う◯こしてる女の子に向かって便所で愛を告げて地獄の雰囲気に耐え忍んだ一日を経験したんだぜ?
そりゃお前愛ちゃんもトラウマ級の惨事だろうけど俺だってPTSD級の大惨事だぜ。
思い返せばこんなことだらけだ。
俺の人生そんなんばっかりだ。
入念に計画を練らない性格が災いしている事は分かっている。
でも恋って何時だってセンセーショナルで計画通りなんていかないもんだろ?
まぁ…う◯こ中の愛の告白は…少し…その…センセーショナルの度を超えていたとは思うんですけどね…。
いや、おま、ちょ、でもアレはさぁ!愛ちゃんだって悪くね!?
そりゃ俺が悪いにしたってだよ!?
10:0で俺が悪いわけじゃねぇだろうよ!
迸る性欲と雌を手中に収めんとする飽くなき欲求を剥き出しにしている高校三年生の男女交際や性に関して情弱な平成男子を前にう◯こしてあんな艶めかしいセリフと吐息を聞かされて正気でいれる奴なんて高僧の中にだって居やぁしねぇ!!
分かってんよ!!
俺がモテねぇのはこういうところだってことくらいよォ!!
オホソ…
取り乱してしまった。
話を戻す。
さて、俺のその後であるがやや行動にブレーキがかかった。
愛ちゃんの一件は自分を客観視する良き転機となったわけだ。
そのブレーキをかける要因は愛ちゃんだけではない。
そう、就職である。
俺がその後現在まで働くことになる会社へ就職したわけである。
俺が通っていた高校は優秀なわけではない。
優秀なわけではない高校の中で俺は優秀ではない成績ではなかったが、奇跡的に地元ではかなり大きな企業に就職することができたのである。
だが、この就職先の当時の新入社員研修は、令和日本では考えられないほど苛烈を極めるものだった。
その内容はアメリカ軍のブートキャンプと酷似している。
人格否定、罵倒から始まり規律訓練、連帯責任の植え付けなど正に昭和丸出し、馬鹿丸出しの研修だ。
世が世ならば集団訴訟モンだぜ。
そのブートキャンプは四月一日の入社式直後から始まり時はゴールデンウィーク。
この連休を機に会社に来なくなる者、辞めていく者が続々と現れる中俺はなんとか喰らいついていた。
疲弊していく心と体であったが、俺には楽しみがあった。
心の支え、「下田綾子」を始め、俺の存在を好意的に捉えてくれている妹的存在、中野祐実と加瀬姉妹が俺を支えていた。
奴らは中学校三年生になっていた。
思春期真っ只中だぜ?
しかも受験なんていうイベントも控えていて普通かなりナーバスになる時期だろう。
それでも奴らは俺みたいな人間を慕い、懐いてくれていた。
時は流れ、約百日にも及ぶブートキャンプを終えた七月、俺達新兵…いや、新入社員は本配属先を言い渡され、骨を埋める先へと旅立って行った。
その七月の第一週目の土曜日の夜、缶ビール四〜五本飲んで酔っぱらった俺のPHS(今は亡き無線通信を使った携帯電話の下位互換機器。高速移動中はほぼ通話不可の雑魚)に中野祐実から電話がかかってきた。
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