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9 夜の討論
そして、皇帝陛下の寵姫としても名が知れ始めた頃。
相変わらず皇帝陛下は私の部屋に入り浸りだった。
とは言え、初夜をするでもなく、戦法や国興しについての話ばかりをしていた。
「して、そなたは補給部隊を壊滅して、バトルボードゲームでイグナードに勝利した、と言うのか?」
「おっしゃる通りにございます。」
「あまりかっこいい勝ち方とは言えんな…」
眉を顰めて言う陛下に私は物申す。
「恐れながら陛下…
勝ち方に、かっこいいもカッコ悪いもクソもございませんわ。
要するに戦いにおいては勝つことが全てなのですから。
確かに私の戦い方は防戦一方にも見えます。
しかし、ならば、陛下は防戦のやり方を習うべきだと考えます。」
「習う、だと?
百戦錬磨の戦の将たる俺に言っておるのか?」
皇帝陛下は不機嫌そうに口を歪める。
「百戦錬磨…
まさにそうでございましょう…
智略に富み、謀略も心得、したたかな賢さもある…
皇帝陛下にすれば、防戦の戦いなどはカッコ悪いと切り捨てることやもしれません…」
「何もそこまでは言ってはおらぬよ…」
「いいえ、そう驕っておられます。」
「何!?
俺が驕っていると申すか!?」
「まさに!」
「俺は常に自分を冷静に見ておる!」
「いいえ、それでしたら、私の戦いから何かを学ぶはずでございます。
皇帝陛下はカッコ悪いと、一蹴されました。
そこに驕りがあるのです。」
「俺に守りによる戦いをせよ、と?」
「必ずしもしなくても構いませんが、心得ておく必要はございます。」
「補給部隊…な…」
「それで思い出しました。」
私は話をさりげなく変えた。
「何をだ?」
「補給部隊は実際の戦いにおいても非常に重要でございますよね?」
「もちろんだ、軽んじてはおらぬ。」
「で、あれば…
この国には為すべき事がございます。
いいえ、皇帝陛下には為すべき事がございます。」
「何だ?」
「それは支援・補給部隊の経路の整備にございます。
補給部隊が遠回りや道に阻まれる事は戦の勝ち負けに関わります。
この国の道は整備が遅れております。」
「ふむ…
しかし、道の整備となると…
金がかかるな…」
「それでしたら、ルードラの金山の売り上げをお使いください。
ルードラ侯爵には私が話を通しておきますゆえ。」
「全くそなたには敵わぬよ…
…次の夜はもっと深く関わりたいものだ…」
「なるほど…
戦術について深く討論するのも楽しそうでございますね。」
トンチンカンな事を言う私。
「やれやれ、俺は苦労しそうだ…」
そう言って皇帝陛下は苦笑いして帰って行かれた。
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