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11 百戦錬磨の将
次の日、皇帝陛下のお忍び用の馬車で、ルードラの街に向かった。
ルードラ侯爵家に滞在させてもらう予定である。
ルードラ侯爵はえらく恐縮して、皇帝陛下と私を迎えた。
1番良い部屋を与えられたのは良いものの、皇帝陛下と同室であった。
「エティーナ。」
「な、な、何でございますか!?」
私は十歩ほど後退しながらそう尋ねた。
「何もとって食おうとは思っておらぬ。
俺の勘によれば、今宵面白い事が起きるぞ。
ルードラの街に繰り出そう。」
「はぁ…
しかし、ルードラ侯爵が心配なさるのでは?」
「あほぅ、内緒でに決まっておろう?」
というわけで皆が寝静まった頃、ルードラの街に下りていった。
「シャルナーク軍が来たぞー!」
「逃げろ!」
「あっちの鉱山に行ったぞ!」
いよいよ、シャルナーク軍が攻めてきた!
ん?
だけど、あっちに鉱山などあったか?
鉱山はルードラの南東部にあるのである。
あっちと言えば北西部だ。
「な、面白いだろう?」
「皇帝陛下、一体何をなさったのでございますか?
あっちに鉱山など無いではないですか。」
「そ・れ・が、あるやもしれぬぞ?
偽の鉱山がな。」
ニヤリという皇帝陛下に私は作戦のほぼ全容がわかった気がした。
「なるほど!
偽の金山の情報を流し、その金山には兵を潜伏させておく訳ですね!?」
「惜しい…!
が、少し違うな。
兵など1人も居らぬよ。」
「はぁ!?
それでは、偽の鉱山だと気がつけば…!」
私は言うが、皇帝陛下は余裕そうだ。
そして、しばらくして、また噂話が回ってきた。
「シャルナーク兵が撤退したぞ!」
「ほとんどのシャルナーク兵は生き埋めになったらしい!」
「やったぞ!
俺たちの勝利だ!」
生き埋め?
一体何がどうなっているのだ?
「ふん…
狐につままれたような顔をしておるな。
どうだ、これぞ、俺の兵を使わずに敵軍を退ける方法よ!」
「一体どう言うカラクリにございますか?
説明してくださいませ。」
「簡単な事よ。
あの偽の金山はな、壊れやすく作ってあったのだ。
そして、ルードラの市民達はシャルナーク軍が偽の金山に入ったところで、全員で偽金山の上に乗って飛びたり跳ねたり…
すると、どうだ?
金山は崩れて、大半は生き埋めになったはずだ。
これが、市民を使った俺の策だ。」
「皇帝陛下、お見事でございます!
参りましたわ…」
「ふん。
言ったであろう?
百戦錬磨の将だ、と。」
「はいはい、わかりましたわ。
あ、パンケーキセットがあるそうですよ?
食べていきましょう!」
そうして、シャルナーク軍の鉱山攻撃は不発に終わり、偽の金山の情報を流したことで、誰も鉱山を気安く攻める事ができなくなったのだ。
まさに、見事な作戦である。
百戦錬磨の将…か…
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