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12 なーにか足りない
「うーーーん…」
その日私は頭を捻っていた。
金山の発掘(ついでに銀山も見つかった)、道の整備など、改革は十分に進められているようにも思えるが、なにーか足りないような気がする。
一体なんだろう?
「はぁ…」
「どうしたの?レイ?
あなたまでため息をつくなんて、珍しい事もあるものね。」
「いえ…
申し訳ございません…」
「いいのよ、理由を教えてちょうだい。
何か力になれるかも知れないわ。」
「実は…
私の出身は南大陸という所にございまして…」
レイはオドオドと話し始めた。
「南大陸…
ここ、セニナーナ大陸の南にある大陸の事ね。
確かもう戦乱は終わり、ラブーシュ帝国によって平定され、平和が訪れているとか。」
「まさにおっしゃる通りでございます。
いえ、その…
ここの食べ物も非常に美味しいのですが、たまに、南大陸のマンゴーやパパイヤが恋しくなってしまって…
それから、アボカドという野菜もございます。
あぁ、あの甘くてフルーティな味わいは…
あ、申し訳ございません…!」
レイはすぐに頭を下げる。
「いいえ、謝る事はないわ。
これで、私がやるべき事がはっきりしたのですから。」
「は?」
「少し本城に行ってくるわ。」
「い、いってらっしゃいませ!」
そして、皇帝陛下の間に通された。
「皇帝陛下におきましてはご機嫌麗しく…」
「社交辞令は良い。
何だ?
そなたが来るとロクなことはないわ。」
皇帝陛下は皮肉混じりにそう言った。
「皇帝陛下に申し上げます。
金山・銀山が見つかり、財源が揃った今しなくてはならない事がございます。」
「何だ?
新たな鉱山でも掘るか?」
「いいえ、見当違いでございますわ。」
私ははっきりと言った。
「キサマ、皇帝陛下に向かって見当違いなどとっ!」
騎士長ベルゼンが息巻く。
「良い良い。
もう慣れておるわ。
続けよ、エティーナ。」
「はい。
しなくてはならない事、それは貿易にございます。
南方と北方にそれぞれ大きな大陸があるのをご存知でございますね?」
「もちろんだ、ラブーシュ帝国に収められた南大陸と、ロックロー国、ヴァイン国、ダルタ国の三つに分かれた北大陸であろう?
それくらいの知識はあるに決まっている。
しかし、そこと貿易せよ、とそなたはそう言うのか?」
「そうでございます。
貿易の利点は輸入にあります。
国は生産が不得意な財を輸入するために生産が得意な財を輸出しているのであり、それは自らが生産するよりは効率的であるということです。 貿易は限りある資源を効率的に利用するためのとても便利な仕組みといえます。
例えば、南大陸からはパパイヤ、マンゴー、アボカドという果物と野菜を輸入できますし、さらに大事なのは北大陸から輸入できる鉛と鉄にございます。
これらは、どちらも、我が国では生産不可能な貴重な資源にございます。」
「なるほど…
そなたの論は一理ある。
すぐに港の整備を始めさせよう。
それで良いな?」
「皇帝陛下の賢さには頭が上がりませぬ。」
そうして、南方貿易と北方貿易が始まりつつあった。
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