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16 決戦の時
そして、戦いの日となった。
それぞれベルゼン殿と私は、3千の兵を与えられ、森の北と南に布陣した。
開始の笛の音がなり、私たちの軍は森の中に入っていく。
こちらは、前衛は軽装歩兵隊、その一歩後ろに槍隊、そして、弓隊…
一般的な陣形である。
ただ、森の中ということで、歩兵隊は軽装にした。
「前方に500の敵発見!」
ラッセル殿が言う。
「軽装歩兵隊突撃せよ!」
私は罠であると知りながら、あえてそう言った。
そして…
ベルゼン殿のある合図と共に、我が軍の軽装歩兵隊の頭上から矢が飛んできた。
ベルゼン殿は木の上に陣を張ったのだ。
よほど鍛えられた部隊なのだろう。
普通は木の上から矢を射るなど、到底出来ない。
これこそが、ベルゼン殿の策…!
「行きますか?」
ラッセル殿のその言葉に私は深く頷いた。
「騎猫隊突撃用意!
突撃!!!」
騎猫隊…それは、ラッセル殿に頼んで作らせた新たな部隊であった。
つまり、大猫又族を調教し、その背に乗るという部隊だ。
大猫又族は木登りを得意としており、木の上に上り、弓隊を引きずり降ろし始めた。
さらに、鋭い爪での攻撃が得意であり、木の上から悲鳴が聞こえ始めた。
「敵兵残り1200ほどを発見!」
ラッセル殿が言う。
「槍隊突撃せよ!
騎猫隊も跡を追って突撃!
弓隊射よ!」
私は号令をかける。
そうして…
ベルゼン殿の軍は壊滅し、勝利の女神は私に微笑んだ。
「…殺せ!
生き恥を晒すくらいなら、騎士長として死んだ方がマシだ!」
ベルゼンは興奮した面持ちでそう言った。
「ベルゼン殿。
命と言うのは真に大切な人・物を守る時に賭けるものです!
私との勝負が、メンツが、そんなにもあなたの大切なものか!?
違うはずだ…
きっと、あなたの大切な人は、あなたを心配しておられるでしょう…」
そう私が言った時、皇帝陛下が白馬で現れた。
「2人の決戦見せてもらった…
まさに、見事…
俺はそなたら2人がこの国の宝の一つである事を確信した。
ベルゼン、悔しいならば、今後の戦いにて挽回せよ。
それがお主に与えられた使命なのだ。」
それを聞いて、私は深く一礼し、ベルゼン殿は足元から崩れ落ちた。
こうして、ベルゼン殿との一騎打ちは無事に終わったのだった。
それ以降、騎猫隊はベルゼン殿の指揮下に入れられ、ラッセル殿も副騎士長として、その辣腕を振るった。
はぁぁ…
冷たいビールでキュッとやりたいものだ。
久しぶりにルードラの街の酒場にでもいくか。
私は一件落着し、そんなことを考えながら、相変わらずトパーズの後宮へと帰っていった。
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