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17 マリアの説教
そうして、その後…
ベルゼン騎士長とラッセル副騎士長とは、なんと、飲み友達になっていた。
私は毎夜毎夜、城下町に外出し、ベルゼン殿とラッセル殿とこの国の行く末を考えながら飲み明かした。
皇帝陛下は、全く困った奴らだ…と呆れ果てており、私は、その飲み会やら、軍事指導やら、街の復興やら、貿易の監督やらで、後宮の夜の勤めもろくに果たしていなかった。
その日も深酒して朝帰りすると、マリアが仁王立ちしていた。
これは、少しまずいかもしれない。
そう思った頃には、時すでに遅し、である。
マリアは私の襟首を掴むと床に正座させた。
「エティーナ様ッ!」
「だから、外では無いのだから、そんなに大きな声を出さなくても聞こえるわ。
あいにくと耳は悪く無いのでね。」
私は正座しながらも、精一杯の皮肉を言うが、マリアの怒りは頂点に達しているようだった。
「エティーナ様!
エティーナ様は軍師様ですか?それともルードラの侯爵様ですか?それともベルゼン様達の飲み友達ですか?
いいえ、エティーナ様はまず第一に後宮の姫でございます!
後宮でのお勤めを果たして居ないのに、飲みだ、酒だ、町興しだ、貿易だ、戦だ、と…
あまりにも軽率!
皇帝陛下も呆れておりますわ!!!
昨夜も花束を持ってエティーナ様に会いに来られた皇帝陛下を追い返した私の気持ちが分かりますかっ!?」
マリアは鬼の形相で正論を振りかざす。
「だけど…」
「だけど、何ですかぁ!?」
「いいえ、何も無いわ…
悪かったわよ、マリア。
これからはできるだけ後宮に居るようにするから…
ねっ?
機嫌を直して…」
私は言う。
ベルゼン殿、ラッセル殿達悪友と飲めないのは残念だが、しばらくは大人しくしていた方が良さそうだ。
「よろしい…
この度、ベルベットの国が我がエドババーバ国の属国となった事はご存知ですね?」
「えぇ、もちろんよ!
そう言う話ならば、よく知っているわ!」
「そこで、2国の永遠なる繁栄を願ってエドバ城で式典が行われますの。
それも、もちろんご存知ですわね?」
「えぇ…
まぁ…」
式典などには興味のかけらも無いので、スルーしていたのだが…
「そこには、沢山の王族・貴族が来られます。
私の言いたい事は分かりますね?」
「わかったわよ…
姫君らしくその式典に出席すれば良いのね?」
「ご明察ですわ。
それから!
しばらくは夜は外出禁止でございます!
皇帝陛下も賛成だとおっしゃられておりますから!」
「そんなぁぁぁ!?」
私の虚しい叫び声が後宮にこだましたのは、言うまでも無いだろう。
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