30 スーベルシア

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30 スーベルシア

sideファウル スーベルシアの国王が会食に俺を招いた時、何となく嫌な予感はしていた。 俺は宰相のイグナードと共にスーベルシア王の会食に出席した。 「ファウル殿、最近のご活躍は目を見張るものがございますな。」 スーベルシア王はそう言って分厚いステーキにナイフを入れた。 「いえ、まだまだ若輩者でございます。」 「いやいや、お若いのに中々の才覚をお持ちのようだ。」 「いえ、本当に過大評価にございます。」 俺は一応の謙遜をする。 しかし、一体何の用だ? 会食に毒でも盛られてやしまいな? いや、毒味も居るから、それは無いだろうが。 本来ならば、スーベルシアとエドババーバは犬猿の仲。 おそらく、どちらかがこの中央大陸を制するだろう、と噂されているライバル国である。 「失礼ですが、スーベルシア王、ご用件をお伺いできますか?」 俺は担当直入に聞いてみた。 「なに、私も色々と考えましてね… 私の国、つまりスーベルシアはセンティスと手を組み、ファウル殿の国、エドババーバはベルベット国そして、シャルナーク国を手に入れた。 私たち2つの国がぶつかり合うのはあまりにも無駄な事だ、そうは思いませんか。 おそらくスーベルシアとエドババーバが戦となれば、多くの犠牲が出るでしょう。 そこで、私たちの間に平和協定を結びませぬか?」 「…………」 俺は一旦沈黙した。 これは、きっと何か裏があるに違いない。 例えば、こちらに不利な協定であったり、何か条件があったり… 「ははは! やはり賢帝であられるようだ! その通り! この協定には条件があります。」 「…どのような条件でしょうか?」 「私には特に可愛がっている末娘が居ましてね。 年は16歳と若いですが、器量も良いし、中々聡明です。 どこに嫁に出すか、困っていましたが、彼女・リーナに我々の架け橋になってもらおうと思っています。」 「つま…り…?」 「おや、察しが悪いですな。 ファウル殿な正妃として迎え入れて欲しい、という事です。」 「正妃、ですか…?」 それは意外な悪くない提案だった。 だが、同時に迷惑な提案でもあった。 「お返事は1週間後で結構です。 しかし、これがスーベルシアとエドババーバが共存していく、最後のチャンスとなるでしょう。 さもなくば、どちらかが…」 スーベルシア王はそう言ってステーキを下げさせた。 俺は重苦しい気持ちで、エドババーバに帰らなければならなかった。 案の定、家臣のほとんどはそれを受けるべきだ、と俺に進言した。 イグナードは沈黙を貫き、ベルゼンとラッセルだけが反対していた。
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