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33 私めの策
そうして、秘密裏に騎狼隊が編成された。
騎猫隊同様に部隊長は副騎士長のラッセル殿が務める事になった。
そして、その頃、大きな戦いが始まろうとしていた。
相手はヤルガータの国である。
ヤルガータの国は運河の国として栄え、その運河は澄み、漁業や生活用水の要でもあった。
軍事力においても確固としたものがあり、歩兵隊と重装歩兵隊は特に優秀だと聞く。
そんな国と戦をするものだから、こちらも張り切りざるを得ない。
その日の夜、皇帝陛下がお越しになった。
相変わらず私たちは地図を広げて、熱心に今回の作戦について語り合った。
「おそらく、ベルベット国のベーラの街付近にて戦いになるだろうな。」
陛下が地図を指しながら言った。
「ベーラにございますか…
であれば、陛下、敵軍はここに本陣を築くのではありませぬか?」
私は地図の一点を指差して言った。
そこは、前面だけが開いた断崖絶壁の崖に囲まれた窪み、だった。
私がもし、ヤルガータの国の将であるならば、そこに布陣する、と思ったからだ。
「ふむ。
やはりそなたは賢明よの。
俺もそう考えていた。
となれば、前面から総攻撃しか無いか…
果たして、ヤルガータの歩兵隊と重装歩兵隊に競り勝てるか…?」
「陛下、私に秘策がございます。」
「ほぉ…?
何だ、もったいぶらずに申せ。」
「もったいぶってなどおりませんが…
陛下はお気づきでは無いですか?
この断崖絶壁の崖の布陣を攻略する方法を…」
「断崖絶壁の崖を攻略…?
何を言っておる?
崖から飛び降りろ、と申すか?
人でも馬でもこの崖は降りられまい。」
「確かに人でも馬でも無理でございます。
では、狼ならいかに?」
「狼…!?」
「そうです。
私が密かに騎狼隊なるものを作ったのは陛下にもお伝え申し上げましたね?
この崖、断崖絶壁と言いますが、わずかに傾斜がついております。
狼は足腰が強く、どんな坂道も登り、また、降ります。」
私は説明する。
「つまり、騎狼隊にて、崖を下り、背面からの奇襲攻撃をせよ、ということだな!」
皇帝陛下は流石の飲み込みの早さで、策を理解した。
「御意。
まさか敵は背面からの攻撃があるとは、思ってもいないでしょうから。」
「ふむ…
もしや、そなた、この戦いを見越して騎狼隊を作ったのか?」
「いえ、残念ながらそれは偶然にございます。
しかし、騎狼隊の使い方についてはいくつかシュミレーションしておりましたゆえ。」
「研究熱心な事だ…
その熱心さが僅かでも他に向けば、な。」
「は?
他、と言いますと?」
「それは…
何でも無いわ…
もう良い…」
陛下は苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。
私たちはベッドで戦や政について語りながら、陛下にもたれて眠ってしまった。
眠りに落ちる直前に、唇に柔らかいものが触れた気がしたけど…
気のせいかな?
goodnight…
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