34 一人の姫

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34 一人の姫

そうして、皇帝陛下のエドババーバ軍は見事ヤルガータ軍を倒し、陛下は凱旋帰国された。 その頃には、もう、私と皇帝陛下の仲は公認のようなものであり、僻む姫も、陥れる者もいなくなった。 と、思っていた… そして、その日1人の姫が私の部屋を訪ねて来られた。 「これは… ダイヤモンドの後宮のミーシャ様…!」 マリアが驚きの表情でそう言った。 「少し、軍師姫… いえ、エティーナ様にお話があってまいりましたのよ。 席を外して2人きりにしてくださる?」 ミーシャ様はそうおっしゃる。 というわけでソファ席にて、お話を伺う事にした。 「初めまして、ミーシャ様。 それで、私にお話とは?」 「私はシャルナーク国の王女でした。 まぁ、ダイヤモンドの後宮に入っているのは、王女や王族なのだから、説明しなくても分かるかもしれませんが… 正妃候補として、この後宮に入り3年が経とうとしていますわ。」 「それはそれは…」 私はなんと言っても良いのかわからない。 話の要点もまだ見えない。 「しかし、皇帝陛下は一年前に後宮に入られたあなたに夢中… かなり、悔しかったけれど、あなたの軍才は本物のようで… 誰も何も言えなくなった。」 「…………」 「でもね、私の性格からして、何もしないまま負けを認めるのは嫌ですの。」 「と申しますと?」 「皇帝陛下との一夜をかけて勝負しません事!?」 「はぁ… 皇帝陛下との一夜、ですか…?」 「えぇ、皇帝陛下があなたに夢中なのは、悔しいけれどもう認めていますし、私としては一夜で十分ですわ。」 一夜でも二夜でも、好きにすれば良いのに… つい、そう思ってしまった。 「して、どのように勝負するのですか?」 勝負と聞いてはやはり負けられないものがあるのだ。 「今月の末に、エドバ城の裏山にて、狩猟大会がありますのよ。 ズバリ、その大会でどちらが多くの獲物を獲れるか!? で、いかが!?」 「なるほど… 確かに勝負にはうってつけでございますね。」 「つまり、同意したという事でいいのかしら?」 「分かりました… お受けしましょう。 その勝負。」 「ありがとうございます。 それでは、狩猟大会の日に。 失礼致しますわ。」 そして、ミーシャ様はダイヤモンドの後宮に帰って行かれた。 やれやれ、一難去ってまた一難…か… そんな事を思いながら、その日はルードラの街に繰り出し、金山の監督をした。 私とミーシャ様が勝負をするという話は、国中を駆け巡り、賭けの対象とまでなった。 みんなの賭けでは、ミーシャ様の方が若干有利なようだ。 私はやっと重い腰を上げ、弓矢の練習をする事にしたのだった。
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