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47 運命の一戦
sideファウル
エティーナと語り合い、たまには出かけ、そんな心穏やかな日々が続くと思っていたが…
やはり、俺は戦場に生きていくしか無いようだ。
戦の神様は俺を放してはくれなかった。
スーベルシア国と同盟を結んでいるセンティス国との戦いが始まろうとしていた。
その夜エティーナの部屋に向かうと、彼女は言った。
「陛下!
どうして、センティス国との戦の件相談くださらなかったのですか!?
私に良い策が…!」
「ストップ!
辞めてくれ、エティーナ!」
「は?
何故ですか?」
「エティーナ、この戦は俺自身の力で勝ちたいのだ。
そして、勝った暁には、そなたを正式に正妃候補としたい。」
「へ、陛下…」
「エティーナ、俺は必ず勝つよ。
そなたのためにも、俺自身のためにも。
だから、今回だけは見守っていてくれ…」
俺は言い、彼女の美しい手をとってキスをした。
「勝ちを…信じておりますわ…」
「ありがとう、エティーナ。」
♦︎♦︎♦︎
そして、いよいよ戦いの日となった。
実は、今日まで、ろくな作戦が浮かんでいなかった。
しかし、俺は空を見上げて思う。
俺にも勝機はある。
と…
そうして、俺たちの軍は出陣した。
戦いの場は、エドババーバ国のバルド地方の平野だ。
地の利は同じで、軍の数は若干エドババーバが優っている。
とは言え、相手も大軍で勝負はどう転ぶかわからない。
「陛下。
このままの陣形で正面から衝突されますか?」
共に戦場に来たイグナードが尋ねる。
「あぁ、それしかあるまいが、前衛部隊で出来る限り時間を稼いでくれ。
それから、鉄矢と鉄槍を出来る限りかき集めよ。」
「何かお考えが?」
「ある。
が、まだ言えぬ。」
「かしこまりました。
仰せの通りに。」
イグナードは軍の指示に戻っていった。
俺がまた空を見上げて、数十分後、戦いの始まりを告げる太鼓の音が鳴った。
両軍が土煙を上げて突撃する。
エドババーバの軍は時間を稼ぐ為、やや後退しながら敵軍の相手を持久戦でしている。
もう少し…
もう少しだ…!
俺はまた、空を見上げた。
空は静まりかえっているが、堆肥臭い匂いがし、鳥は低空飛行している。
そして!
北東の空に黒い大きな雲の塊が見え、段々と近づいてくる。
あれは、おそらく魔嵐雲だ。
激しい魔雷と魔雨を伴った嵐のことで、魔雷はとめどなく落ちるし、魔雨は激しく降る。
俺はそのタイミングを計っていた。
そして、魔嵐雲がこちらに到達した!
俺は叫ぶ。
「今だ!
鉄矢を射よぉぉぉ!
鉄槍を飛ばせぇぇえ!」
俺の声の合図で、敵陣に向かい、温存していた後方部隊から鉄矢と鉄槍が無数に飛ばされた。
そして…!
雷が轟き始めた。
「魔法部隊!
火魔法、近・中・遠、同時攻撃!」
俺はさらに軍を叱咤する。
敵軍に飛ばされた鉄矢と鉄槍に向かって雷が落ち始める。
火が風に乗り、敵軍を焼き尽くす。
嵐は吹き荒び、俺たちに味方した。
圧倒的な勝利だった。
「皆の者!
勝鬨をあげよ!
我らが勝利ぞ!!!」
そうして、大きな勝鬨が上がり、俺はセンティス国を見事に破ったのだった。
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