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54 攻めは強いが…
その日、ベルゼン殿とラッセル殿と酒場に居た。
私たちはこの国の未来について熱く語り合っていた。
「ですからぁ!
皇帝陛下こそが、この世を治めるべき人であり…!」
ベルゼン殿がビールジョッキを叩きつけながら言う。
「ところで、エティーナ殿。」
「何ですか?
ラッセル殿?」
「いや、エティーナ殿にいい案があるやもしれぬ、と思って聞くのですがね。
我が軍の弱点についてですよ。
ベルゼン殿に申し上げても、戦に勝っているのだから問題無い、と一蹴されますので…」
「はぁ。
して、何ですか?」
「いや、我が軍は騎狼隊や騎猫隊の活躍により、攻めにはめっぽう強いが、守りには実は弱いのです…
今のところ攻め一方の戦いゆえ、誰も指摘しませんがね。
俺はそれが気になって気になって仕方ないのですよ。」
ラッセル殿がだし巻き卵を食べながら言う。
「なるほど…
確かにそれは…
しかし、いい案、ですか…」
私は考える。
「えぇ。
よろしければ明日、軍の練習を見にこられませんか?
実際に見てみると何か発見があるやもしれません。」
「では、そうさせていただきましょうか。」
そして、私達は酔いを醒ましながら、長い坂道を登って行った。
♦︎♦︎♦︎
次の日、訓練所に行くと、ベルゼン殿が総指揮を、ラッセル殿が騎狼隊と騎猫隊の指揮をとっていた。
なるほど、攻め一方である。
魔法部隊もよく作動しているが、サンダーボルトなどの攻撃魔法が目立つ。
はて?
攻撃魔法が使える者がいるならば、防御魔法を使える者はいずこに…?
私が壁際に目をやると、10人程度の魔導師達がトグロを巻くように座り込んでいた。
私は彼らに話しかけた。
「あなた方は何の魔法を使えるのですか?」と。
すると、彼らの1人はこう言った。
「アースウォールとか、地味ーな、防御魔法でさぁ。
皇帝陛下からは、一度もお呼びがかかった事はありませんさ。」
「そう…
私があなた達の力が必要だと証明するわ。」
「え?
どうやって…?」
「騎狼隊!
今から彼らが防御するから、思い切り突っ込むでちょうだい!」
「エティーナ殿!
それは無茶ですよ!
騎狼隊の実力は知ってるでしょう!?」
「大丈夫よ。
魔法防御部隊、用意は良いわね!?」
「はいさぁ!
役に立つと証明するさ!」
そして、10人の魔導師達が構えた。
そこに、騎狼隊が突っ込んでいく。
「アースウォール!」
「トゥリーウォール!」
「ファイアウォール!」
「ウォーターウォール!」
次々と魔法の壁が立ちはだかり、騎狼隊は前に進めない。
それどころか壁に攻撃までされている。
「おぉぉぉぉ…
騎狼隊が進め無いとは…!」
ラッセル殿が唸り声を上げる。
「そこまで!
この勝負、魔法防御部隊の勝ち!!!」
魔法防御部隊は大歓声に包まれ、彼らは涙を流して喜んだ。
こうして、新たに魔法防御部隊が編成された。
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