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57 三割のキモチ
私は…
皇帝陛下に惹かれ始めていた…
それに気づいたのは、最近寂しい、と、彼に会いたい、と、思うようになってからだ。
私の気持ちは一割から三割まで上がっていた。
だけど、それを伝える事は恥ずかしくて中々出来なかった。
そんな中珍しく多忙の陛下が私の部屋にお泊まりになった。
私たちは楽しく夕飯を食べて、ベッドで肩を寄せ合った。
「なぁ…」
「はい?」
「そなた、ここに来る前には、そ、その、好きな人などいなかったのか?」
そう陛下は聞いた。
そんなことを聞いて何がしたいのだろうか…?
しかし、私はとりあえず答えた。
「いいえ、居ませんでしたわ。」
本当の事である。
「そ、そ、そうか!
では、その口付けたりするのも…」
「今世では陛下が初めてですね。」
「そ、そ、そうか!
ん?
待て待て、今世ではと言う事は、前世では?」
「私には恋人がおりましたのよ。
はっきりとは覚えていませんけれど、優しくて穏やかな人でしたわ。
でも、私は事故で亡くなってしまった。
残されたその人はさぞかし悲しかったでしょうね…」
「そ、そ、そうか…
そなた、今でも其奴のことを…!
その…」
「うーん、はっきりと答えるならば、いいえ、ですわね。
もう、私には好きな人が居ますから。」
「な、なに!?
それはどこのどいつだ!?」
天然ボケを炸裂する陛下のおでこに、私は軽くキスした。
「それは…少し天然で、熱き心を持ち、世を正そうとする…可愛い人ですわ。」
「か、か、可愛いと言うのは…
褒め言葉にならんだろ…!?
俺は皇帝ぞ…?」
「陛下は、人の痛みを知ってらっしゃいますわ。
弱い人を助けようとする心もまたある。
そして…人を愛する気持ちも…
そこが可愛いんですのよ。」
「そ、そ、そうか…
そなたがそう言うならば、それでも良い気がする…」
「ふふふ。
陛下にお伝えしたいことがございます。」
「なんだ?
別れ話なら応じぬぞ。」
「違いますわ…
私の気持ちは今は三割という事です。」
「!?
誠か!?」
「えぇ…
悔しいですけれど、ね。」
私は微笑んだ。
陛下はそんな私に優しく口付けた。
「そなたが可愛い過ぎてならぬ…」
「眼科に行かれては?」
「返事が可愛いくない!」
私たちはシーツの中で笑い合った。
そして、繰り返し、繰り返し、口付け合ったのだった。
甘い夜はまだまだ続いていくようだ。
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