58 不治の病

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58 不治の病

sideファウル その日、いつも通り政務を皇帝の間で行っていると、イグナードが急に倒れた。 「イグナード様ッッッ!」 「イグナード殿!」 「イグナード!!!」 俺ももちろん、そう叫んでイグナードを抱き起こした。 すぐに部屋に運ばれたイグナードの診断結果は()()だった。 盲腸といえば… この世界では、ヒール魔法も効かずに、死ぬしか無い。 そんな… イグナードが… 盲腸…!? どうすれば… どうせすれば良いのだ…? そんな時ふと、エティーナの顔がよぎった。 ダメで元々だ! 異世界に居た彼女ならば、なんとか出来るやもしれぬ!!! そして、エティーナの部屋に向かった。 「エティーナッッッ!」 「陛下、どうされたのですか? そんなに慌てて…」 「イグナードの奴が盲腸になったのよ…!」 「まぁ! 盲腸に…!?」 エティーナは驚く。 「そなたの知識でなんとかならぬだろうか…? 盲腸はこの世界では死の病… しかし、今イグナードを失う訳には行かぬのだ…!」 「そう…ですね… 私もイグナード様には世話になったゆえ、なんとかしたいところではあります。 陛下、国中から、いえ、国を超えてでも、優秀な医師をかき集めてくださいませんか?」 「あぁ、お安いご用だ!」 「私は裏山に少し用があります。」 「裏山に? 分かった。 とにかく、医師を集めよう。」 sideエティーナ 陛下はそう言い、皇帝の間に戻った。 私は裏山に向かった。 確か… 私が前の狩猟大会で… ()()()()が咲いていたはずだ。 そう、私は盲腸を手術出来るように麻酔薬を作ろうとしていた。 モルヒネをポーションと合成させれば、()()()()()()()()()が出来るはずだ。 それであれば、ポーションの役割も果たす。 異世界ならではの薬である。 そして、合成魔導士にモルヒネポーションを作り出させ、集めた医師に()()についての知識があるかどうかを確認した。 すると、1人の医師が、麻酔薬さえあれば手術出来る、と答えた。 そうして、豚で手術の練習をして、いよいよイグナード様の手術が始まった。 1時間… 2時間… 経っても手術は終わらず、皆が不安になり始めた時、医師が出てきた。 「手術は成功にございます! あとは1ヶ月もすれば全快するでしょう!」 みなから歓声が上がった。 その後、イグナード様はポーションの影響もあってか、みるみる内に回復した。 私はここぞとばかりにエストの街に大病院を建て、モルヒネポーションを使い盲腸患者を受け入れる事にした。 すると、どうだ? 病院はそれまで不治の病だった、盲腸患者で溢れ、行列が出来るほどであった。 こうして、エストは医学の街として栄えたのだった。
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