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私は父、キャラック伯爵の愛人の娘だ。
父と母がいつ出逢ったとか、どうして愛人になったのかとか。そういうことは一切知らない。母はもうこの世にはいないし、父もそのことについては口を堅く閉ざしている。……妻である義母の目が、怖いのだ。
母亡き後、私は伯爵家の血を引いているからとこの家に迎え入れられた。でも、そこからが地獄の始まり。
義母は愛人の娘である私を嫌った。今思えば当然だ。だって、自分の夫が浮気をしていた確たる証拠のような存在だから。
父は私のことを徹底的にいないものとして扱った。視線が合いそうになれば逸らされ、声をかけられることも滅多にない。
そんな日々の中、ただ唯一。異母姉であるヴィオラだけは、私に優しかった。
「ペネロペ。そんなところにいては危ないわ」
木の上にいる私を、下から異母姉が見つめている。彼女の髪の毛はきれいに編み込まれていて、身にまとうワンピースも上質なもの。私に与えられるものは異母姉のおさがりばかりなのに。
「放っておいてよ、お義姉さま」
冷たく言い放っても、異母姉は私に構い続けた。
来る日も、来る日も、来る日も……。異母姉は、私を気にかけてくれた。
もちろん義母の目がないときに限っていた。けれど、孤独な日々と慣れない貴族としての生活。
すり減っていく私の心を唯一救ってくれていたのは。間違いなく、異母姉だったのだろう。
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