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「あのね、ペネロペ。今度、わたくしの婚約者が邸宅にいらっしゃるのよ」
すっかり私の定位置となった木陰にて。異母姉は嬉しそうにそう言っていた。
このときの異母姉は十五歳。私は九歳。婚約者の意味を、少しずつ理解できる年齢となっていた。
「ふぅん。そうなんだ」
興味なさげに呟けば、異母姉が「もうっ」と声を上げる。きっと彼女は可愛らしく頬を膨らませているんだろうな。簡単に想像できる彼女の拗ねた顔。私の胸が、苦しくなる。
(ついにお義姉さまも婚約されるのね。……もう、私とは一緒にいてくださらないんだわ)
このときの私は、異母姉の婚約者に嫉妬していた。異母姉と一緒にいられるその男性が、羨ましくてたまらなかった。
「お相手は十八歳なのですって。わたくしよりも三つ上なのよ。きっと、大人の男性なのでしょう……!」
頬を染めた異母姉が、ほうっと息を吐く。
三歳差なんて大したことじゃない。だけど、子供の頃の三歳差は自分が思うよりもずっと大きなものだ。
異母姉はまだ見ぬ婚約者に確かな憧れを抱いていた。
相手は大人の男性なんだって。きっと、自分をお姫さまのように扱ってくれるんだって。
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