case1.年上夫と押し付けられた妻

7/8
前へ
/8ページ
次へ
「あのね、ペネロペ。今度、わたくしの婚約者が邸宅にいらっしゃるのよ」  すっかり私の定位置となった木陰にて。異母姉は嬉しそうにそう言っていた。  このときの異母姉は十五歳。私は九歳。婚約者の意味を、少しずつ理解できる年齢となっていた。 「ふぅん。そうなんだ」  興味なさげに呟けば、異母姉が「もうっ」と声を上げる。きっと彼女は可愛らしく頬を膨らませているんだろうな。簡単に想像できる彼女の拗ねた顔。私の胸が、苦しくなる。 (ついにお義姉さまも婚約されるのね。……もう、私とは一緒にいてくださらないんだわ)  このときの私は、異母姉の婚約者に嫉妬していた。異母姉と一緒にいられるその男性が、羨ましくてたまらなかった。 「お相手は十八歳なのですって。わたくしよりも三つ上なのよ。きっと、大人の男性なのでしょう……!」  頬を染めた異母姉が、ほうっと息を吐く。  三歳差なんて大したことじゃない。だけど、子供の頃の三歳差は自分が思うよりもずっと大きなものだ。  異母姉はまだ見ぬ婚約者に確かな憧れを抱いていた。  相手は大人の男性なんだって。きっと、自分をお姫さまのように扱ってくれるんだって。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加