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差し出されたおじさんの手の上には、パックにぎゅうぎゅうに詰まった白い肉。「国産豚白モツ 180グラム」と書いてある。
「……」
「モツ有るよ! なんちゃって」
「……」
「……」
「パパー! リビングに泥棒ー!」
「あー! ちょっとちょっと! 酷いっ! プレゼントあげたら見逃してくれるって言ったじゃん!」
僕とおじさんでぎゃあぎゃあ言い合っていると、騒ぎを聞きつけたパパが寝室から降りてきた。そしておじさんはパパにあっというまに捕まって、パパは「警察を呼んで引き渡そう」と言った。
おじさんは大した抵抗もせず、捕まってからずっと下を向いてシュンとしていた。その姿が妙に寂しげに見えて、僕はなぜか胸がギュッと締め付けられた。
「通報ありがとうございます。泥棒の身柄を引き受けに来ました」
数分後、やって来たお巡りさんは淡々と言っておじさんの身体を乱暴に引っ張った。
ついさっきまで一緒になって騒いでいたおじさんが、ずるずると引き立てられてゆく。
「ま、待ってください! お巡りさん」
僕は衝動的にお巡りさんを呼び止めた。
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