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目を極限まで細めつつ、冷めたトーンで返す。おじさんは「あ」と呟いた後、わかりやすくアタフタし始めた。
「い、いっけねぇ! 間違えちゃったぁ! おじさん、ちょっと慌て過ぎちゃったみたい! これがほんとの、あわてんぼうのサンタクロースみたいな? 的な?」
わざとらしく額をぺっちーんする自称サンタに、とりあえず思ったことを率直に聞く。
「いやいや。おじさん、サンタじゃないよね?」
「な、何を言ってるのかなボク。どこからどう見てもサンタクロースじゃないか」
胸を張って仁王立ちしたおじさんに、僕は冷静に指摘をする。
「どこからどう見てもサンタクロースじゃないよ。まずその真っ黒な服は何? サンタの服は普通赤色でしょ?」
「こ、これはアレだよ。煙突のすすで汚れちゃって」
「ふーん。まぁ、それに関しては100歩譲ってそういうことでいいよ。でもさ、その他の部分は全部おかしいよね?」
「どこもおかしくなんてないさ! ほら、見てよこの帽子! サンタは皆、帽子を被っているだろう?」
「そうだけど、少なくとも『ほっかむり』ではなかったと思うよ」
「何!? じゃあこの口ひげはどう!? サンタと言えば口ひげみたいなとこあるよね!?」
「僕の知ってるサンタのひげは、口の周りを丸く取り囲む『黒ひげ』ではないね」
「くっ……! じ、じゃあコレ! この背中に背負った袋! これはさすがにサンタでしょ!」
「そのいかにも怪しい『唐草模様の風呂敷』がどうかした?」
「むきぃぃぃっ!」
僕の指摘に、おじさんはヒステリックな声を上げた。
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