あわてんぼうのほぼサンタクロース

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「何さっ! つまりボクは何が言いたいの!? ハッキリ言いなよ!」 「おじさん、サンタじゃなくて泥ぼ……」 「あー! いい! 言わなくていい! みなまで言うな!」 「いや、おじさんが言えって」 「え、何? ボクはおじさんがサンタじゃないと思ってるの?」 「だからそう言ってるじゃん」  僕が応えると、おじさんはこれみよがしに目を見張り、口に手を当てワナワナし始めた。なんかめっちゃ腹立つ。 「待って待って。落ち着いてボク。一旦仕切り直そ? ボクは今ちょっと先入観に囚われちゃってるみたいだから、一回フラットな目で状況を見てみようよ! ね?」 「フラットな目って……」 「帽子を被って、ひげを生やして、大きな袋を背負って、そして雪の降る夜に煙突から忍び込んできたおじさんだよ? それはもうサンタじゃない?」 「すごいね。確かに情報だけ並べるとサンタっぽいや。雪は降ってないけど」 「ぽいじゃなくってサンタなんだってば! ほら! ハッピーバースデー!」 「メリークリスマスね。言い慣れてないから間違えちゃってるよ」 「悪い子はいねがー」 「それはなまはげ。もうキャラぶれぶれじゃん。いい加減諦めたら?」  返事に困った様子のおじさんは、突然子供のようにわめき出した。
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