6人が本棚に入れています
本棚に追加
おじさんは必死の形相で手をすり合わせた。
「えー、駄目だよ。サンタじゃないなら通報しなきゃ」
「確かに俺はサンタではないよ? でもね、それはサンタという正式な肩書きを持ってないってだけで、実態はほとんどサンタみたいなもんだから! ≒サンタだから!
例えば、見た目はゴキブリみたいなメスのカブトムシと、見た目はメスのカブトムシみたいなゴキブリがいたとして、ボクはどっちを飼いたい? ちなみにおじさんはオスのカブトムシを飼いたい」
「いやちょっと、何言ってるかわからないです」
僕が首を捻ると、おじさんはやれやれといったふうに肩をすくめた。なぜ僕の方が呆れられているのだろう。
「わっかんないかなぁ。要するに、おじさん基準ではほとんど同じなんだよ。サンタも泥棒も。だって似たような格好して、夜中人ん家に不法侵入。やってること自体はほとんど変わらないからね。モノを届けるか盗むかの違いだけだよ。おじさんは偶然後者だったけど」
「ちょっと、それもう自白と変わらないから! ≒自白だから!」
僕が声を荒げると、おじさんは冷静にと手でジェスチャーをした。
「いやもうほんと、ほぼほぼ同じだよ? ボクにはまだ難しいかもしれないけど。例えるなら『ベートーベン』と『弁当食えん』ぐらいの差しかないからね」
「意味わからないんだけど!? てか、それもう別物って認めてるのと同じじゃない!? だって生物と非生物だもん! 発音以外似てる部分一つも無いもん! ……いや発音も大して似てないわ!」
「おー、元気なツッコミだなぁ」
「うるさい!」
息が切れるほどツッコむ僕に対し、おじさんは余裕の笑みを湛えている。
あれ、なんか形勢逆転してる?
「まぁまぁ。ちょっと、ベートーベンの有名な肖像画を思い出してみてよ……どう? 彼、小食っぽい感じじゃない? だからきっと『弁当食えん』は彼の口癖みたいなもんだったと思うよ。ほとんど代名詞だよ。
だから『ベートーベン』≒『弁当食えん』は成り立つんじゃないかな」
「知らないよ! なんかもう論点ズレまくりだし!」
最初のコメントを投稿しよう!