あわてんぼうのほぼサンタクロース

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 おじさんは必死の形相で手をすり合わせた。 「えー、駄目だよ。サンタじゃないなら通報しなきゃ」 「確かに俺はサンタではないよ? でもね、それはサンタという正式な肩書きを持ってないってだけで、実態はほとんどサンタみたいなもんだから! ≒サンタだから!  例えば、見た目はゴキブリみたいなメスのカブトムシと、見た目はメスのカブトムシみたいなゴキブリがいたとして、ボクはどっちを飼いたい? ちなみにおじさんはオスのカブトムシを飼いたい」 「いやちょっと、何言ってるかわからないです」  僕が首を捻ると、おじさんはやれやれといったふうに肩をすくめた。なぜ僕の方が呆れられているのだろう。 「わっかんないかなぁ。要するに、おじさん基準ではほとんど同じなんだよ。サンタも泥棒も。だって似たような格好して、夜中人ん家に不法侵入。やってること自体はほとんど変わらないからね。モノを届けるか盗むかの違いだけだよ。おじさんは偶然後者だったけど」 「ちょっと、それもう自白と変わらないから! ≒自白だから!」  僕が声を荒げると、おじさんは冷静にと手でジェスチャーをした。 「いやもうほんと、ほぼほぼ同じだよ? ボクにはまだ難しいかもしれないけど。例えるなら『ベートーベン』と『弁当食えん』ぐらいの差しかないからね」 「意味わからないんだけど!? てか、それもう別物って認めてるのと同じじゃない!? だって生物と非生物だもん! 発音以外似てる部分一つも無いもん! ……いや発音も大して似てないわ!」 「おー、元気なツッコミだなぁ」 「うるさい!」  息が切れるほどツッコむ僕に対し、おじさんは余裕の笑みを湛えている。  あれ、なんか形勢逆転してる? 「まぁまぁ。ちょっと、ベートーベンの有名な肖像画を思い出してみてよ……どう? 彼、小食っぽい感じじゃない? だからきっと『弁当食えん』は彼の口癖みたいなもんだったと思うよ。ほとんど代名詞だよ。  だから『ベートーベン』≒『弁当食えん』は成り立つんじゃないかな」 「知らないよ! なんかもう論点ズレまくりだし!」
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