ユーナとして生きる

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「馬鹿なことを言うな。ストロキバウス家の娘である以上、庶民の暮らしなどさせられるわけがない。自堕落な生活から抜け出したいというのであれば、すぐにでも家庭教師を呼び戻そう。お前のデビュタントは失敗している以上、良い縁談が来るとは思えないが、ストロキバウス家と繋がりたがる貴族はいくらでもいる」  そう一蹴され、私の異世界スローライフ計画は白紙になった。  そして機嫌の悪そうな家庭教師が朝から夕方まで毎日語学、ダンス、テーブルマナーと私に令嬢として最低限の知識や立ち振る舞いを叩きこむこととなった。  なんでユーナは今まで何も学んでこなかったのよ。  結奈の記憶を持っても何の意味もない、この世界の常識をイチから学ぶのは非常に大変だった。  唯一刺繍の知識は役に立ったけど、指が思うように動かずハンカチを血まみれにしてしまった。  だけど、楽しい。  異世界での知識を肌で感じ、学べる事がとても楽しかった。  ユーナを自らの手で淑女に仕立て上げていけることに、喜びを感じていた。  もしかしたらこの先、ファンタジー小説もびっくりの悪役公爵との結婚が待っているかもしれない。手違いで貧乏男爵の後妻に収まって、継子にいびられるかもしれない。  だとしてもラストはハッピーエンド、悠々自適の生活へどんでん返しが出来るように、知識と教養を身につけておこう。  私は家庭教師もびっくりの勢いで、教えられることをどんどん吸収していった。
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