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「いらっしゃい」レジに座る店番の婦人が私に声をかけ、微笑む。
私は軽く頭を下げ、店内をゆっくり散策する。
ふと、1冊のタイトルが気になった。
『愛を知らない私が異世界で沢山の愛に包まれました<1>』
……愛を知らないって……まるでユーナだな。
私はその本を手に取り、立ち読みを始めた。
―――衝撃的だった。
正しくその主人公はユーナで、こちらの世界の住人のユーナが異世界つまり結奈が元居た世界に転生していたのだ。
つまり、転生というより私とユーナの魂が入れ替わったという事?
自暴自棄になったユーナが屋敷の窓から飛び降り、気がつけば病院のベッドに寝かされていたところから物語が始まった。
見たことが無い景色、知らない人間。
主人公は元居た世界で異世界転生の小説を読んだことがあっても、自分の身に起きるなんて信じられなかったという。
この物語には、主人公の中身が我が娘ではないとわかっていつつも献身的な愛情を注いでくれる両親、優しい友人に囲まれて人の優しさや愛を知り、自分も両親や友人を愛し、そして恋を知るまでが綴られていた。
ん?恋?
お相手は同じサークルに所属している1つ上の先輩。
私のタイプでは無かったけど……確か顔は整っていたと記憶している。
そうだ、ユーナは『異世界転生は小説で読んだ』と言っている。
私はこの本が置かれた周辺を確認すると、同じ作者レイティ・ジョナルドの異世界転生らしきタイトルの本が数冊並んでいた。
それらの小説の主人公の転生先も、私が元居た世界のようだ。
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