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レイティ・ジョナルド
「夢でね、見るのよ。すごく不思議なのにリアリティのある夢だから、どうしても本にしたくなって。結奈の話が5作品目かな」
レイティ・ジョナルドは20歳後半といった、若い女性だった。
「夢で映像は見ているとはいえ、あの世界観を表現するには骨が折れたわ。だけど私、ツイているわね。まさかその世界の住人の転生者に会うことが出来るなんて。聞きたいことが沢山あるのよ」
そう言ってレイティは紙とペンを用意した。
「どうして……どうして私とユーナは入れ替わったのですか!?元に戻ることは出来ないのですか!?」
レイティはただ夢の内容を記しているだけだとわかっていつつも、つい彼女に詰め寄ってしまった。
「うーん。過去の作品も同様に入れ替わっていたけど、今のところ元に戻った前例はないなぁ。向こうの世界のストーリーしか知らないけど、皆幸せに暮らしているようだし」
そりゃ、不幸な生い立ちや孤独な令嬢が、不安しかない未来から逃げ出せたのなら幸せだろう。
私だって未来に不安が無いといえば噓になる。政略結婚当たり前のこの世界、どんな相手に嫁がされるかわからない。
だけど、悲観していたって状況は良くならない。私の人生、より良いものにするために足掻く努力は惜しまないでいるつもりだった。
そう、悲観していても……良くはならない。
「ねぇ、レイティ。次に書くお話に……含めてもらいたいことがあるのだけど」私が微笑むと、レイティは目を輝かせて紙とペンを手に取りなおした。
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