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来月、僕は明日花と入籍する。
「……なんで花なんか買ってきたんだよ」
沈黙の果てに目についた、ミニバラの柔らかな黄色は父に育てられ、いつか花開くだろうか。
「母さんと約束した。お前が大人になって、誰かと一緒になる事があれば、綺麗な花を買ってきてその香りで天国の私に一番に知らせてねって。それが母さんの病院での口癖だった。花が好きな人だったから」
「育てられるの、父さんに」
「出来ないことはないさ」
僕が作った料理に父が箸をつける。
なんてことないいつもの光景。
そのいつもを今日、父が終わらせようとしている。
「うまい」
涼やかな風が優しく部屋を吹き抜ける。
届いているだろうか、母に。
見ていてくれるだろうか、この人を。
いつか無事、蕾が開いたその時は空に虹をかけて僕らを祝福してほしい。
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