11.地下牢(ベアトリクスside)

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11.地下牢(ベアトリクスside)

「「え?どういうこと?僕達が優秀だから……じゃない?」」 「違います」  私は即答しました。事実ですから。  そんな私達のやり取りを聞いていた姉がクスクス笑いだします。 「ふふ……っ、優秀って。……愚かだわ。公爵家の跡取りだと言うのに成績は振るわない。領地の視察すらしない。……それ優秀と言えるのかしら?確かに地頭が悪いわけではないけど。集中力に欠けるのよ。地道な作業も苦手よね。領地経営ってコツコツした積み重ねが大事なのよ。なのに貴方達は、『楽しくないから』と言ってすぐに遊びに走る。せっかちなのよ。長い目で物事を考えられないのね。短期で終わらせようとする。それと……『終わった』と、自己完結。こんなのにどうやって領主の仕事をさせろというの?」 「「……」」  二人は黙ってしまいました。  自覚はあるのでしょうか? 「私の妹が貴方達の婚約者になった経緯だってそうよ。貴方達があまりにも傍若無人で同世代の女の子達に酷い言葉を投げかけるものだから仕方なくお鉢が回ってきてしまった。ただそれだけなのよ?もっとも、顔だけの貴方達と違ってベアトリクスは小さい頃から優秀だと評判だったもの。教育係からも言われたんじゃなくて?『婚約者のベアトリクス様は優秀なのに』って。事実、ベアトリクスは貴方達の何倍も優秀だったのよ」 「「……」」 「悔しかったでしょう。誰が貴方達に吹き込んだのかは見当がついているわ。彼女は『優秀なベアトリクスちゃんの婚約者なんだから、貴方達も優秀なのよ』と、言ったのでしょう?」 「「……」」 「言った本人は覚えていないでしょうね。あの人は無責任だもの。思ったことを口にしているだけ」  容赦なく双子の心を抉っていく姉。  双子は俯いて黙ったまま微動だにしない。  お姉様……私、必要でした?  その後も姉の口攻撃は続き、双子のライフはゼロに近かった。  泣くまで許さない。ではなく、泣いても許さない。  そんな感じです。  姉は、「言いたいことは言ったわ」と言ってスッキリした顔をしていました。  余程、この双子が嫌いだったのでしょう。  私は、というと……言いたいことの全てを姉が代わりに言ってくれたので、特にありません。  本当に、私は何のために来たのでしょう。 「じゃぁ、私達はこれで失礼するわ。残りの時間を有意義にすごしてちょうだい」  お姉様の独壇場で終わりました。  ジメジメとする地下牢をさっさと出ていくお姉様。  それに続いて私も双子に背を向け歩き始めます。  二度と振り返ることはないでしょう。  後ろから「待って」と、縋るような声が聞こえましたが、私は聞こえない振りをしました。    元凶の男爵家の庶子は、気が狂ったかのように支離滅裂な言動を繰り返し、あっさりと処刑されました。  一応、貴族ということを考慮して毒杯を賜ったと聞きます。ですが、本当のところは危険思想の持ち主だと認定されたので公開処刑ではなく、地下牢での処刑だったのです。  王家は本当に容赦ないですね。  拷問の末に、あっさり死ぬことも許されず。  痛みと苦しみの中、毒杯を仰いで死ぬ。  なんとも恐ろしいこと。  拷問も普通のものではないと聞きます。  女性としての尊厳を著しく損なうもの、だとか。想像するだけで恐ろしい。  姉曰く、 「大勢の人の人生を狂わせたのよ。その狂わせた原因の好きなことをさせてあげたのだから、寧ろ優しいくらいよ。あそこの地下には極悪人しかいないから、ご同類として一緒の牢に入れてあげたの。親切でしょう?泣いて喜んでいたわ。彼女のお陰で極悪人の犯罪者達も大人しくなったから一石二鳥ね」  だそうです。  姉の言っていることは半分も理解できなかったけれど、それ以上聞いてはいけないような気がして黙秘しました。  ええ……、賢明な判断だったと思います。
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