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プロローグ
音を殺して近づき扉を蹴破ってから中に転がり込んで態勢を立て直し銃口を男に定める。
「……グレース」
まるでこうなることをわかっていたように男は微動だにせずただこちらを見つめ返していた。
「トルシュカ、私を騙したのはあなた?」
「打ちたいなら撃てばいい。俺は構わない」
「あなたが私を殺して。最初からそのつもりだったんでしょ」
引き金から指を外しグリップを男に向けると男は渋面で拒否を示していた。
「……そう、殺す価値もないのね」
金属音の擦れる音と秘書の焦った声が聞こえそれに呼応するように男と視線が重なったようにみえた。
「グレース!」
男の声が酷く焦っていた。
机を飛び越えてきたよりもはやく視界が反転して白い天井に赤い飛沫が飛び散ったのを最後に視界は暗転し消えた。
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