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第三章
「カルバドス」
「……あら、いやっだぁ。メロジットじゃない。やっと会いに来てくれたのね」
「久しいな。かわりないか」
「なかなか会いに来てくれなかったから寂しかったのよ」
「すまない。仕事が忙しくて」
「ふふっ、あなたのつれないところも好きよ」
「あら? そっちの坊やは初めてかしら」
軽く会釈をすると分厚い睫毛が上下してウィンクを飛ばされた。
「なぁに、メロジットってばあたしを捨てたの」
「まさか、そんなはずはないだろう。私はこれでも一途でね」
「知ってるわよ。だからあなたを好きになったんだもの」
「それでなにか出たのか?」
台に乗せられた遺体は首から上が吹き飛んで判別不能だった。
「そうねえ。目をくり抜かれる舌は切り取られている。まあ傷口から見て素人の犯行でしょうね」
「それと、体内からは筋弛緩剤が検出されたわ。この薬品が体内に入ると筋組織が緩んで一時的に身体が麻痺状態になるんだけど意識はあるの。司法解剖通りなら彼は生きたまま殺されたみたいね」
「この遺体は……」
「……メロジット?」
「いや、なんでもない。引き続きなにかわかれば教えてくれ」
「ええ、わかったわ」
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