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第三話
「いえ、彼は彼女の弟なんです。私も親しくさせてもらっていますが、彼女は私を気遣って公表は控えていたのです。近く発表予定でして──」
「それはそれはようございました」
話の流れが思わぬ方へと流れたことに話半分に耳を傾けていたジュリエッタは視線を彼へと戻した。
「ジュリエッタには私の一方的な一目惚れで、私の無理を通し婚約まで漕ぎ着けたのです」
いつの間にか繋いでいた手を顔の高さまであげ口付けられている。
「あらあらまあ」
頬を赤く染めたのは領主夫人だった。
「彼女が部下に示しがつかないのではと関わりを減らしていたことがあらぬ誤解を招いたようで、我ながら情けない話ではあるのですが先日もそのことで少し揉めまして。おそらくそれが尾鰭背鰭が付いたのかと。ですが、これからはこうして彼女とも公務に出掛けられることがなによりも幸せです」
よく嘘が次から次へと出るものだと内心感心していたほどだ。
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