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「あと飲んでる最中ずっと携帯鳴ってたよな」
「人の携帯盗み見んなチャラ男が」
「偶然たまたま目に入っただけですー、ラインの通知えげつなくて『あ、これメンヘラな男と付き合い出したんかな?』って思って心の中でによによしてただけですぅー」
さすがに既婚者とふたりでサシ飲みは気が引けたので、他にもふたりほど後輩を誘って近場の居酒屋に行ったのだが、そこでなりゆき的に卯木の隣に座ったのが運の尽きだった。
確かに最近毎日膨大な量のサクからの連絡が携帯には届いており、正直言ってうざいことこのうえない。蛙化現象まっしぐらである。どれだけ無視していてもお構いなしなので多分心底暇なんだと思う。働け。
「しかも今朝も早ぇのになっかなか帰んねえし」
「酒は飲んだら吐くまででしょ!」
「まじで体壊すからその破滅的な飲み方やめな?もう俺ら若くないんだぜ?」
「わかってるわよ!」
さすがに私だって翌日の仕事に支障をきたすような飲み方はもうしない。昨日だって終盤ちょっと帰りたくないと粘ったけど、最終的には日付の変わる前に帰宅して、今朝もそれなりに元気に出社してこの時間まで働いてるんだから、文句を言われる筋合いはない。
「はるみんにメンヘラは絶対合わないからやめとけって、それならまだたけるんとより戻すほうが安心安全パイナポーよ」
「わけのわからん言語で喋るな」
「あとは吉良廉介が振られたら抱いてやって」
「死んでもこいつだけは御免だわ」
「死んでもこいつだけは御免だわ」
──と、綺麗に吉良とハモったところで盛大に舌打ちを吐き捨てて脛の辺りを蹴飛ばしてやる。私が拒絶するのはいいが、吉良に拒絶されるのは納得いかないので。
ああ、ほんと何やってんだろ。
早急にあの駄犬を追い出さなきゃ安寧の危機だ。
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