八方塞がり

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 兄貴と瑠衣君と話すのは楽しかった。瑠衣君ともすぐに仲良くなれた。 「ビール少なくなってきたな。爽、ジュース買っていいから、ビールも頼む」  兄貴に財布を渡され首を振った。 「おつかいだって言っても未成年に売ってくれねーよ」 「ん? そうか。じゃー、瑠衣と行ってこい。2人いれば飲み物もつまみもたくさん買えるだろ」 「客に買いに行かせんなよ。兄貴が来い」 「俺、買い出し行くよ。一緒に行こ?」  顔を覗き込まれ、瑠衣君が首をコテンと傾けるから何も言えなくなった。イケメンなのに可愛い仕草が似合う。  近所のコンビニでカゴの中に酒とジュースにつまみを入れる。俺はいつも兄貴にカゴを待たされている。買ってもらうから俺も自分から荷物持ちに徹する。今回も持とうとしたが、瑠衣君が飲み物で重くなったカゴを持ってくれた。 「お弁当でも買っていこうか? 夕飯多分ないよ」  種類の違う弁当を3つカゴに入れ、デザートコーナーで立ち止まる。  新作のプリンがすごく美味そう。ジッと見ていたら瑠衣君が少し屈んで目線を合わせた。 「甘いもの好きなの?」 「うん、めっちゃ好き!」  それもカゴに入れて会計をする。ここでもドリンクばかりを詰めた袋を持ってくれる。俺は弁当とつまみの入った軽い袋を持った。  家までの道を半分ほど過ぎた辺りで瑠衣君が足を止める。 「どうしたの?」  先に進んだ分だけ戻り、瑠衣君の顔を覗き込む。 「酔いが回ったみたいだ。1人で歩けそうにない」  今までしっかり歩いてたのに、こんなことってある?! 酒を飲んだことがないから分からないが、後からくるって聞いた事もあるような、ないような。  ここに瑠衣君を置いていくわけにもいかず、かといって俺が担いで行けるわけもなく。瑠衣君は俺より10センチくらいは高そうだ。 「ちょっと待ってて。兄貴呼ぶから」  ポケットからスマホを出すと首を振られる。 「肩を貸してくれないか?」 「あっ、うん、いいよ。荷物俺が持とうか?」 「いや、大丈夫」  瑠衣君の腕が肩に回る。体重は掛けられていない。むしろ引き寄せられて肩を抱かれているだけのような気もする。 「ん? もっともたれかかっても大丈夫だよ」 「これでいい。帰ろう」  さっきよりゆっくりとした足取りだが、これ、肩かしてるっていうのか? 肩を抱かれて密着してるだけじゃね?  親父や兄貴を思い出す。酔っ払うとフラフラとして真っ直ぐ歩けなかったはず。酷いとぐるぐるバットした感じ。瑠衣君は俺の知ってる酔っ払いと違うんだけど?!  喋らなくなった瑠衣君に顔を向ける。思ったより近くに端正な顔があった。 「大丈夫? 気持ち悪い?」 「平気だよ」  少し顔が赤くなった。酔いが顔に出てきたようだ。家に着くまで瑠衣君の症状が悪くなるのを見逃さないように、顔を覗き込みながら帰った。瑠衣君の顔はどんどん赤くなっていく。家に着いたら横にさせよう。
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