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玄関の扉を開いて兄貴を呼ぶ。のそのそこちらまで来た兄貴は目を丸くした。
「瑠衣君酔ったって。寝かせてあげて」
俺の肩に回る腕を掴んで兄貴の肩に回させた。飲み物を冷蔵庫に入れていると瑠衣君の、ヤバいしんどいどうしたらいいのか分からない、という声が聞こえた。相当酔ってるみたいだ。自分のジュースとグラスに注いだ水を持って部屋に入る。
「はい、今日はもう飲まない方がいいんじゃない?」
「うん、ありがとう」
グラスを受け取られる時に指が触れた。瑠衣君の指はすごく熱かった。
「爽、俺にもなんか持ってきて」
「何がいいの?」
「赤飯」
「ないよ。コンビニ行く前に言えよ。弁当ならある」
「いや、腹は減ってない。なんかめでたいもんが欲しかっただけ」
腹減ってないならなんで赤飯って言った? しっかり喋っているように見えるけど、兄貴もかなり酔ってるのか? 兄貴にも水を持ってきて渡した。もしかして俺、今から酔っ払い2人の介助しなきゃいけないのか?
そんな風に思っていたが、介助は必要なかった。2人とも弁当も食べた。俺はその後プリンを美味しくいただいた。風呂にも入ったし、スウェット姿で今は兄貴がベッド、瑠衣君がベッドのすぐ近くにひいた布団でゴロゴロしている。
「兄貴、Tシャツと短パン貸して」
兄貴はクローゼットを漁り、俺に服を投げた。それを受け取り風呂に行く。体も頭も洗ってスッキリし、湯船で温まる。気持ちよくて、あー、と思わず声が漏れた。
ほかほかになって風呂から上がり、水気を拭って服を着る。兄貴が出した服は伸びてダルダルだった。仕方がないからこのまま部屋に戻る。
「なぁ、別の服貸してくれね? 首は伸び切って肩が出るし、短パンはゴムが切れてて紐がないから押さえてないとずり落ちるんだけど」
「似合ってるからいいじゃねーか」
「この服似合うって言われたくねーよ!」
「瑠衣もこの服がいいと思うよな?」
兄貴が瑠衣君に振る。おかしいって言ってくれ、と俺は瑠衣君の言葉を待った。
「オフショルダーみたいでいいと思う」
瑠衣君はうっすら赤い顔ではにかむ。オフショルダーって何だ?
「ほら、いいって言われたろ? 短パンはいらねーなら脱げば? お前チビだからワンピースみたいになってんじゃん」
「チビじゃねーよ。俺は普通だ。兄貴と瑠衣君がでかいから小さく見えるだけだ」
168センチはチビじゃない。高1の平均くらいだ。絶対兄貴を抜かしてチビって言ってやる。
伸びきった短パンを兄貴に投げつけると、兄貴は瑠衣君に、やる、と渡した。
「いいのか? ありがとう」
瑠衣君は笑顔でそれを鞄にしまう。それ履くの? 兄貴は絶対いらないものを渡しただけだよ?
昼間の格好を見ると、服装に気を遣っているように見えたが、家ではヨレヨレの楽な格好でもしているのだろうか?
ベッドに上がり、兄貴の隣に横たわる。
「狭い! お前は瑠衣の隣行け」
「え? 何で?」
仲良くなったといっても、今日初めて会った相手とシングルの布団で一緒に寝れるほど俺は図太くない。瑠衣君に視線を向けると顔を真っ赤にして視線を彷徨わせていた。多分瑠衣君も同じ気持ちなんだろう。
「それはまだ早いっていうか……。俺、寝れなくなると思う」
「ほら、瑠衣君も気を遣って寝れねーって言ってるじゃん」
「瑠衣は気を遣ってるわけじゃないけどな。……しょうがないからベッド使わせてやる」
今の発言で気を遣ってないと思える兄貴はおかしいんじゃないか?
兄貴がリモコンで常夜灯に切り替えた。俺は目を閉じてすぐに夢の中へ向かった。
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