八方塞がり

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 テストはいつもより手応えがあった。別にいつも悪いわけではない。大体平均点くらい。答案が返ってくるのが楽しみなテストは初めてだ。瑠衣君には足を向けて寝られない。  今日は瑠衣君と甘いものを食べに行く日。余裕を持って待ち合わせ場所に着いたのに、瑠衣君はすでにいた。 「ごめんね、待った? 瑠衣君早いね」 「全然待ってないよ。テストお疲れ様」 「うん、ありがとう。瑠衣君のおかげでいつもより出来たよ!」 「よかった」  目を細めて口で弧を描いて笑う。今日も瑠衣君のキラキラは絶好調だ。  連れて行かれたのはすごくファンシーな店だった。ここは男1人で入るの厳しいかも。店の中は白とピンクばかり。至る所にテディベアが飾られている。  予約してくれていたようで、すぐに案内された。  メニューもクマをモチーフとしたものが多い。 「瑠衣君は食べるもの決まった?」 「シフォンケーキとコーヒーにしようかな」 「俺はアイスと生クリーム乗ったパンケーキにする!あとハニーラテ」  店員を呼び注文する。待ってる間辺りを見渡すけど、可愛すぎて落ち着かない。瑠衣君は平気そうだ。 「瑠衣君はよく来るの? このお店」 「初めてだよ。爽君はクマが好きなんだよね? だからこの店を選んだんだ」 「俺がクマ好きって兄貴が言ってたの?」 「好きとは言ってなかったけど、部屋に飾ってるって言ってたから好きなのかなって」  瑠衣君が目を瞬かせて首を傾ける。違うの? と目で訴えられているようだ。  俺の部屋には確かにクマはいる。でも、こんなに可愛らしいものではない。中学の修学旅行の時に友達とノリで買った木彫りのクマ。割とリアルなクマ。何で修学旅行って後から困るようなもの買っちゃうんだろうな。親も兄貴もいらないって言うから、自分の部屋に何となく置いているだけ。特に気に入っているとかではない。  きっと瑠衣君は優しいから、一生懸命店を探してくれたんだろうな。兄貴は絶対笑い堪えながら瑠衣君に、俺がクマが好きだと教えたんだろうけど。  別にクマは好きではない、と言ってもいいのか悩み、曖昧に頷いた。 「クマ、可愛いよね」  俺がめっちゃ可愛いもの好きだと思われるかもしれないが、兄貴に騙された純粋な瑠衣君を傷つけたくないが為に。  瑠衣君は花が綻ぶように、よかった、と笑う。俺も騙しているようでチクリと心が痛むが、邪気のない笑顔に、瑠衣君の前ではクマ好きという設定にしておこうと決意した。  注文したものがテーブルに並んだ。パンケーキの上にクマの形をしたアイスクリームが乗っており、チョコで顔が描いてある。花の形を模した生クリームが傍に添えられている。顔が描いてあると食べにくい、と思うが、温かいパンケーキの上に乗っているから、溶けても悲惨な光景だろうな、とパンケーキを切りつつ顔にもナイフを通した。  大きな口で頬張る。めっちゃ美味い! 甘い物最高!
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