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瑠衣君は何も付いていないシンプルなシフォンケーキ。甘いの食べたかったんじゃなかったのか?
一口食べてブラックコーヒーを口に含む。
「思ったより甘いね」
「そうなの? だからクリームとか付いてないのかもね」
今度は生クリームをたっぷり付けたパンケーキを口に入れた。
瑠衣君はフォークを置いて、ジッとこちらを見てくる。パンケーキ食べたいのか? 一口サイズに切ってアイスと生クリームを乗せた。
「瑠衣君食べる?」
フォークに刺して口元に持っていくと、顔を赤くしてキョロキョロと辺りを見渡す。それで気付く。食べさせられるのは恥ずかしいよな、と。俺の顔も熱くなり、多分赤いだろう。
「ごめんね、恥ずかしいよね」
手を引っ込めようとしたら手首を掴まれた。瑠衣君の方に引き寄せられて、口の中にパンケーキがおさまる。
「ありがとう、美味しいよ。俺のも食べる?」
手を外され、瑠衣君がフォークに乗ったシフォンケーキをこちらに向けた。照れくさいが口を開けて食べた。
「瑠衣君、俺の食べてる方が甘いけど大丈夫だった?」
「うん、爽君が食べさせてくれたからかな? すごく美味しかったよ」
天然タラシを発動されて顔が燃えるように熱くなり、手で顔を扇いだ。
完食すると、シフォンケーキを皿ごと渡された。
「これも食べて」
「瑠衣君いらないの?」
「うん、爽君が美味しそうに食べてるのを見てる方がいいから」
柔和な笑顔と爽やかボイスのコンボに、やっぱり天然タラシだなと思う。
皿を引き寄せて、口いっぱいに入れた。うん、美味しい。
ハニーラテも飲み終わり、会計をして店を出た。
駅まで歩きながら瑠衣君と話す。
「瑠衣君はさ、本当は甘い物苦手なの?」
キョトンとした後、気まずそうに、ごめん、と言った。
「あまり甘いものは得意じゃないんだ」
「じゃー、何で食べに行こうって誘ってくれたの?」
「爽君が甘いもの好きだって言ってたから。もっと仲良くなりたくて一緒に食べにいきたかった」
「仲良くなりたいなら瑠衣君も好きなものじゃなきゃ嫌だな。我慢して欲しくないし」
「ごめんね」
「謝んなくてもいいけど。今度は2人共好きなものにしようよ。俺、付き合うからさ」
目を見開いて瑠衣君は固まった。俺、そんなおかしな事言ったか?
「瑠衣君は好きな食べ物何?」
「えっ、辛いものかな」
我に返ったように、慌てて早口に言われる。
「カレーは好き?」
「うん、好きだよ」
「今日予定なかったら夕飯はカレー食べに行こうよ! カレーなら辛さ選べるし、俺も好きだし」
顔を真っ赤にして頷く瑠衣君。暑いのかな?
母ちゃんに『夕飯いらない』とメッセージを送る。作り始めてから送ると怖いから、忘れないうちに。
カレーはやっぱり美味しい。お腹いっぱいで満足。瑠衣君は辛さ10倍を汗もかかずに完食していた。もっと辛くても食べられそうだった。俺は絶対一口でギブアップするんだろうな。食べた事ないけど、色とドロドロ具合で分かる。
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